お笑い芸人の前田健さんが44歳で急死した。レストランでの夕食を終えて外に出た直後、路上に倒れて救急搬送された。直接の死因は2016年4月26日夕、虚血性心不全と発表された。
前田さんは以前から「不整脈」に悩まされており、それが引き金となったようだ。不整脈とはどんな病気なのか。30代以上のほとんどの人に見られる症状から、命の危険に直結する恐ろしいものまであるという。
「これまで大きな病気はしたことがなかった」
前田さんが倒れたのは、同年4月24日19時過ぎ。複数の報道によると、直前まで東京・新宿三丁目のレストランでパスタとパンを食べていた。食後すぐに体調が急変した。通りかかった医大生らが自動体外式除細動器(AED)で蘇生を試み、病院に救急搬送されたが、26日未明に亡くなった。
夕食の前は、バラエティー番組の収録に参加。運動会がテーマの内容で走ったりしたが、一方で胸の痛みを訴えて休憩をとる場面もあったという。それでも収録はすべてこなしており、どれほど体調が悪かったのかは不明だ。
前田さんは不整脈の持病があり、定期的に病院で診察を受けていたようだ。サンケイスポーツの報道によると、所属事務所は持病を把握してはいたが、「これまで大きな病気をしたことがない」と驚いているという。
国立循環器病研究センターのウェブサイトによると、不整脈とは「心臓のリズムの乱れ」で、脈の打ち方がおかしい状態だ。脈拍数が極端に多い「頻脈」や、逆に極端に少ない「徐脈」も含まれる。ただ、運動や精神的興奮で脈が速くなるのは、誰にでも起こる生理的な現象で心配はない。
不規則に脈打つもののひとつに「期外収縮」がある。心臓の中で規則的に電気を送る「洞結節」という部位とは別の場所から、やや早いタイミングで心臓に電気が流れる現象だ。これは「30歳をすぎる頃からほとんどの人に認められ、年齢と共にしだいに増加」する。多くは病気とは関係なく、年齢や体質的な理由だという。症状を感じない人が多いが、のどや胸の不快感や動悸、きゅっとする胸の痛みを感じる場合もあるため、「原因の病気がないか、また期外収縮から危険な不整脈に移行する可能性がないかを一度は調べてもらったほうがよい」と書かれている。
「怖い不整脈」もある。急に失神状態になるケースだ。一時的に心臓が止まっているか、頻脈が起きている可能性がある。逆に徐脈で、体を動かすと強い息切れを感じる場合は、心不全の恐れがある。突然動悸が始まり脈拍数が1分間に150以上になる、脈拍がバラバラで早いケースも危険信号だ。
致命的な不整脈を自動的に止める装置
意識がなくなるような不整脈は、ごく短時間で命を奪う「致死性不整脈」に変化する恐れがある。最も危険なのが「心室細動」で、心室が1分間に300回以上不規則に震えるようにけいれんする状態。運動中の突然死がこれだ。心臓病を持っているのに気づかず激しい運動をして起こしたりする。
ただし、治療法はある。国立循環器病研究センターによると、例えば頻脈の対策として、カテーテルという細い管を足の血管から入れて、先端から高周波を流して心臓の筋肉の一部を焼くことで不整脈を起こさせない「カテーテルアブレーション」という方法がある。また、致命的な不整脈を自動的に感知して止めてしまう装置や、抗不整脈薬の開発も進んでいる。
特に、前触れもなく意識を失った経験が1度でもあれば、「致死性不整脈」を防ぐために、ぜひとも専門医の診察を受けておいた方がよい。