大阪大学外国語学部に附属する外国学図書館(大阪府箕面市)が、70冊を超える雑誌の購読中止を決めた。キャンパス内の図書館に雑誌の購読中止を知らせる張り紙が掲示され、学生から「まともな研究が出来なくなるのは残念」と困惑の声が上がっている。
背景にあったのは資料費の大幅な削減。同じような問題は他大学でも起きており、大学図書館の台所事情が急速に悪化している。
予算激減で「新刊本が購入できなくなる」
「決して独断と偏見で決めたわけじゃないんです」――外国学図書館の担当者はJ-CASTニュースの取材にこう答える。同図書館は、70冊にものぼる雑誌の購読契約を2016年度から打ち切った。購読中止が決まった雑誌の一覧は、貼り紙で館内に掲示。それを見ると、「AERA」「週刊東洋経済」など公立図書館でも読める一般誌だけでなく、「ロシア月報」や「英文學研究」「中国語研究」「フランス語学研究」といった外国語学部には必要と思われる学術雑誌も対象となっている。
主な原因は、書籍をはじめとした学生用の資料に使える予算の激減だ。
「16年の1月に入って、16年度の学生用資料の予算が大幅に減らされることが分かりました。年々減ってはいたのですが、16年度の減り具合はかなり大きかったです」
雑誌のほとんどは定期購読の契約で購入されている。予算の削減にともなってこうした購読料が財政を圧迫し、新刊本を購入する余裕がなくなった。「このままでは新刊本を購入できなくなる」―。そうしたやむを得ない事情もあり、雑誌の定期購読契約を更新する15年度末までに購読中止を決断した。
図書館側は関係者らと対応を協議し、外国語学部の教員らにもアンケートをとった。そのうえで、購読を中止する雑誌をピックアップしたという。
「お金がないので、優先順位が高いものを残しました。公立図書館で読めるものや、特定分野にしか需要のないものは削らざるをえませんでした。どの専攻にも共通して必要と思われる雑誌を残すようにしています」
現在、特定の専門分野でどうしても必要な雑誌は、個別の研究室などで購入してもらうよう教員に依頼しているという。とはいえ、同学部の言語専攻は全部で25を数える。これだけの雑誌を一度になくして、研究に支障は出ないのか。
「研究に支障が出ない、と言えば嘘になりますが、すべての雑誌を購入するのは予算の関係上とても無理です。今後も、ごく特定の分野に偏らない、共通に必要と思われる雑誌があれば契約を検討しますし、場合によっては今回購読中止となった雑誌の『復活』もありえます。ただ、いずれも予算次第ですね」
雑誌「Newton」を教員個人の「寄贈」で存続した大学も
図書館側の決定を阪大外国語学部の学生はどう感じているのか。取材に応じた、ある学生は「せっかく阪大外国語学部に入ったのに、まともな研究が出来なくなるのはとても残念です」と複雑な心境を明かす。
購読中止の影響について尋ねると、「専門の学術誌や、この図書館のみ所蔵の雑誌も多いので、影響はとても大きいと思います」と心配の声を寄せた。この学生は、図書館内に設置されている目安箱(投書箱)に意見書を投げ入れたという。
大阪大と同じようなことは、他大学でも起こっている。関東の、ある理系の国立大学の附属図書館は35冊を超える雑誌の購読を2016年度から中止した。購読中止が決まった雑誌の一覧には、一般誌に混じり、やはり大学の専門分野であるエネルギーや情報技術に関係する学術雑誌も含まれている。
J-CASTニュースが取材したこの大学担当者は「(35冊も購読を中止した例は)ありません」と答える。原因については、阪大と同じく「予算削減のため」だと明かした。
ただ、こちらは教員による支援の動きが見られた。当初、購読中止が発表されていた科学雑誌「Newton」が教員の「寄贈申告」によって、一転、残される方針に改まった。
教員個人の力も借りなければやっていけない――。大学図書館のそんな苦しい台所事情が日本のあちこちで露わになっている。