パソコン作業から、ふと目を上げると、遠くがかすんで見える。目が疲れる、かゆい、乾いた感じがする......。そんなことがよくあると、目に潤いがなくなる病気「ドライアイ」になっている恐れがある。
オフィスで働く人の3分の2がドライアイの可能性が高いというショックな報告が、2016年4月7日に開かれた日本眼科学会総会で発表された。
目の疲れが、生産性を低めて社会に悪影響を
ドライアイは、同学会のウェブサイトによると、日本では約800~2200万人の患者がいると推計され、年々増えている。涙の分泌量が減ったり、すぐに蒸発したりするようなり、眼表面が乾きやすくなって起こる。失明など重篤な結果になることは少ないが、目に傷がついたり、異物感・痛み・疲れがあったり、様々な慢性的な不快状態が続く。
同学会で報告を発表したのは、慶応義塾大学眼科学教室の内野美樹特任講師らの研究チーム。これまでのドライアイの疫学調査は、ほとんどがアンケートを元にしたものだが、今回の報告は、実際にドライアイの専門医が大人数の対象者たちを診察したのが特徴だ。
ある企業の健康診断の受診者561人(平均年齢43歳)に協力してもらい、実際にドライアイの専門医たちが一人ひとりを診察した。その結果、「ドライアイと確定した」人が11.6%、「疑いがある」とされた人が54.0%、「ドライアイではない」とされた人が34.4%だった。「確定」「疑いがある」を合わせた「ドライアイの可能性が高い」人が3分の2の65.6%を占めた。女性の「確定者」は18.7%で、男性の8.0%の2倍以上だった。また、パソコンに向かっている時間が長い人ほど「可能性」が高まることも確認できた。
今回の報告のスゴイところは、企業や対象者の協力を得て、職場での勤務実績を提出してもらったばかりか、アンケートによって一人ひとりの集中力や対人関係、自分の仕事結果に対する評価などの個人調査も行った点だ。その結果、ドライアイの「確定者」は、ドライアイではない人に比べ、あきらかに「労働生産性」の指標が低かった。つまり仕事の能率が下がっているわけだ。
こうした結果について、内野美樹さんはこうコメントしている。
「オフィスワーカーの間で、ドライアイの有病率が思っていた以上に高いことを突きとめることができました。また、ドライアイが生産性を低め、社会に悪影響を及ぼしていることも明らかにできました。世界的に重要な研究だと思います」とコメントしている。