「彼はクレバーな投手だ」
ところが、前田はその3投手を上回るデビューを果たした。初登板ではホームランも打っている。
ドジャースのロバーツ監督はご機嫌である。
「彼はクレバーな投手だ」
たとえばロッキーズ戦だ。先発したコロラドのクァーズフィールドは標高1600メートルの高地で、空気が薄いところから打球がよく飛び、本塁打が出やすい「投手泣かせの球場」と知られている。
前田は立ち上がりからアウトを確実に取った。長打を防ぐため、徹底して低めを突いた。持ち前のコントロールで、しかも丁寧に投げた。このピッチングを見て首脳陣はうなったというわけである。
今後の期待が高まることは間違いない。もう2ケタ勝利は確実といってよく、打線の援護に陰りがなければ15勝、さらに20勝も見えてくる。
といってこのまま勝ち続けるとは思っていない。日本球界で投げた投手は開幕にベスト状態にするよう調整するので、スタートはうまくいくケースが多い。米国の投手、打者は開幕してから時間をかけて調子を上げて行くので、夏場にベストに持って行く。前田の調子が下がったころに打者の調子が上向くという格好になる可能性が出てくる。そこがポイントになるだろう。
「勝利数を積み上げていけるよう頑張る」
前田の活躍は頼もしい限りである。シーズン中に契約内容の見直しがあるかもしれない。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)