2016年夏の参院選の前哨戦と位置づけられていた衆院補選が2016年4月24日、投開票された。自民が候補者を立てられずに「不戦敗」した京都3区では民進党公認で前職の泉健太氏(41)が順当に当選した。一方で、北海道5区では新顔で自民公認の和田義明氏(44)が無所属の野党統一候補、池田真紀氏(43)を破って初当選した。北海道は、中盤の情勢調査でも各報道機関の評価が割れる接戦で、終盤には与野党ともに幹部を本会議を欠席させてまで応援演説に投入するほどの力の入れようだった。
与党が野党に「競り勝った」ことに対し、大手新聞は与党陣営が「7月の参院選に弾みをつけた」とする「楽観派」と、与党側の「危機感」を強調する「警戒派」とに分かれた。
毎日「消費増税めぐる判断など選択肢広がる」
4月25日朝刊1面(東京本社版)の記事を比べると、読売新聞、日経新聞、毎日新聞の3紙は比較的与党側に楽観的な表現で接戦を総括した。
「与野党の一騎打ちとなった北海道5区を制した与党は、参院選に弾みがつきそうだ」(読売)
「『自公』対『野党共闘』の接戦を制し、7月の参院選に弾みをつけた」(日経)
「参院選で勝敗を左右する改選数1の『1人区』での野党共闘の出足をくじいたことになり、参院選に向け弾みとしたい考えだ」(毎日)
といった具合だ。特に毎日新聞は、見送りの公算が高いとみられていた消費増税についても、
「参院選前の大きなハードルだった補選を乗り切ったことで、消費増税をめぐる判断など、政権運営の選択肢は広がったとみられる」
と、消費税を予定通り引き上げる可能性があるように情勢が変化しつつあることを示唆した。
一方、朝日新聞は、1面を見る限りでは
「与野党は夏の参院選に向けた前哨戦と位置づけて総力戦で臨み、『政権の安定と継続』を訴えた与党が支持を得た形となった」
との表現で、比較的中立的だった。
産経は無党派が野党に流れたことを警戒
これらの新聞と対照的なのが産経新聞だ。
「首相、無党派つかめず危機感」
の見出しで、支持政党を持たない無党派層の73%が野党側の池田氏に投票したという共同通信の出口調査の結果を紹介しながら、
「今後、相当引き締めていかないといけない」
という安倍首相の言葉を伝えた。和田氏の当選についても
「ひとまず与党候補が勝利した」
と抑制的だ。
この抑制的なスタンスは、政府・与党と共通している。菅義偉官房長官は4月25日午前の会見で、
「きわめて厳しい戦いだったが、勝利を収めることができて本当に良かったと思っている」
「今回の結果に奢ることなく、謙虚に国家国民のために政府与党としては一致して一層の緊張感を持って有権者の負託に応えられるようしっかり、これからも政権運営に努めていきたい」
と述べた。
谷垣幹事長「脇を締めて摺り足でいくことが肝要」
自民党の谷垣禎一幹事長は、
「我々の主張の方が大きな目であれば分があったことは明らかだとは思うが、これも『自民党、感じ悪いね』『この頃自民党は驕ってるね』『自民党がやっていることは少しピントがおかしいね』ということになると、(野党側による)ピンポイントの批判が力を持ってくる」
と警戒し、「脇を締めて摺り足でいくことが肝要」と述べた。