審議委員の交替で黒田総裁の「野党」が減る?
このような状況の中で日銀審議委員を退任する石田氏は、2014年10月の追加緩和に強く反対し、2016年1月にマイナス金利政策導入を決めた際も反対に回った。一方の政井氏は外国為替を中心にした市場に精通していて、分析では一目置かれる存在だが、「金融政策についてリフレ派といったポリシーが明確なわけではない一方、黒田総裁が進める異次元緩和→円安誘導→物価上昇→デフレ脱却という流れを基本的に支持し、その延長線上でマイナス金利にも理解を示している」(大手紙経済部デスク)とされる。審議委員としては、先に、退任する白井さゆり氏の後任に桜井真氏が決まったのと合わせ、政策委員会での黒田執行部に対してのスタンスでいうと、5対4の1票差でマイナス金利を決めた1月時点と比べ、マイナス金利に反対した白井、石田氏という「野党」が2票減り、桜井氏と政井氏という「与党」が2票増えることになりそうだ。
政井氏については3月初めに「次期審議委員」と一部に報じられ、情報漏れ批判を懸念した政府が正式な選任を先送りし、今回の提示になった。このため、ここにきての日銀とメガバンクの対立公然化が政井氏登用・メガバンク外しの理由ではない。「むしろ、政策委員会からのメガバンク外しが固まったから、メガバンクが日銀批判を始めた」(霞が関筋)との声もある。
マイナス金利まで進んだ金融政策は、4月27、28日の金融政策決定会合でのさらなる追加緩和の観測もあるなど、一段と難しい局面を迎えている。ここで、市場の重要な構成員であるメガバンクとの不協和音がさらに高まることは、日銀の政策運営に悪影響を与えかねないとの見方も出ている。