コンビニ大手3社グループの2016年2月期連結決算が出そろった。国内では数少ない成長産業とあって、3社とも本業のもうけを示す営業利益は過去最高を更新し、その実力をみせつけた。
ただ、業界トップのセブン&アイ・ホールディングスがトップ人事を巡るお家騒動で鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が退任を発表したほか、3位のファミリーマートは9月にユニーグループ・ホールディングス(GHD)と経営統合し、不採算の総合スーパー事業を抱え込むなど、各社とも手放しで喜んでばかりもいられないのが実情だ。
セブン、ヨーカ堂が足引っ張る
お家騒動のあったセブン&アイは、営業利益は前期比2.6%増の3523億円で、5期連続で過去最高を更新した。セブン&アイの決算には苦戦する総合スーパー「イトーヨーカ堂」や百貨店の「そごう・西武」なども含む。しかし、営業利益の8割超を国内外の「セブン―イレブン」が、残りの多くをコンビニに設置したATM(現金自動預け払い機)をインフラとする「セブン銀行」などの金融事業が、それぞれ稼ぐ。もはや「コンビニ一本足」と言って良い収益構造で、グループの営業利益はほぼコンビニ関連だ。そこを踏まえて決算を振り返ると、やはり「セブン―イレブン」の好調さが5期連続の営業利益過去最高を導いたと言える。ちなみに、スーパー事業の営業利益は前期比62.6%減の72億円、百貨店事業は45.7%減の38億円だった。
セブン―イレブンの国内外合計の店舗数は2016年2月末現在で5万8711店と昨年2月末に比べ3430店増えた。国内は2月末で前年同期比1081店増の1万8572店。都道府県でまんべんなく増やしており、東京都が115店増の2396店、大阪府が112店増の1014店などとなっている。店舗網を拡大し売り上げを増やすなか、国内ではおにぎりなどコンビニならではの商品が伸び、海外では飲料などの売れ行きが良かった。既存店売上高も、国内で2.9%増、米国で5.8%増などと高水準のプラスを維持した。
ただ、純利益は7.0%減の1609億円だった。イトーヨーカ堂やそごう・西武の閉店に伴う構造改革費用として106億円の特別損失を計上したことなどが響いた。
ローソン、今後は店舗数で3位に後退
現在2位のローソンは、営業利益が前期比2.9%増の725億円だった。ローソンもコンビニ事業が収益の大半を占めるが、2014年に買収した高級スーパー「成城石井」も好調で、収益の底上げに寄与した。
コンビニ事業は、2015年6月の創業40周年を機に、商品づくりを一から見直した効果が出て、「新潟コシヒカリ紅鮭弁当」を始めとするこだわりの商品が消費者の支持を得た。また、「マチの健康ステーション」として健康を意識した商品が好調。「1食分の野菜」を手軽に得られる「グリーンスムージー」などの売れ行きが良かった。ただ、後述するように、ファミリーマートの経営統合で、今後は店舗数で劣勢に立たされる。
一方、ファミリーマートの営業利益は前期比20.6%増の487億円だった。基幹商品である弁当、おむすび、パスタなどを調理方法から見た目にいたるまで全面的に見直し、品質を向上させた効果が出た。また、2015年10月に発売した電子レンジで調理するラーメンもヒットした。
ファミマ、経営統合でも難題山積
業績好調な3社だが、問題も抱える。セブン&アイは鈴木氏というカリスマ経営者の退任で、経営の求心力をどう保つかなど、困難な課題が待ち受ける。ファミリーマートはユニーGHDとの経営統合でコンビニ準大手のサークルKサンクスを手にし、国内の店舗数は約1万8000店とセブン―イレブンに肩を並べる水準となるが、1店当たりの売り上げではセブンに水をあけられたままなうえ、採算が悪化するスーパー事業も抱え込むことになる。ローソン(国内約1万2000店)は、これまで3位のファミリーマートの国内店舗数が一気に増えるため、今度は上位2社の下になるという事態にどう対応するか、という難題に挑まなければならない。大手3社それぞれに課題を抱えるなか、各社の経営戦略が業界勢力図を、さらに描き変える可能性もある。