熊本県では「低く」設定されていた「地震地域係数」
一方、もう一つの数値である「地震地域係数」は、改築・改修時の判定指標となるis値の「目標値となる数値」(日本耐震診断協会)だ。国土交通省が「1.0~0.7」までの範囲内で定めていて、「1.0」で震度6強~7の揺れを想定している。つまり、地震地域係数が「1.0」ならis値の「0.6」に相当するわけだ。
地域係数について、国土交通省は「現在の係数は1981年の『新耐震基準』に基づいています。大きな建物などを新築する際の『構造計算』時に利用される、安全性をチェックするための数値です」と説明する。
この係数には、地域で起こる地震の頻度などを考慮しているため「地域差」がある。
「1.0」を基準に、たとえば0.7の沖縄県の耐震基準は、1.0の首都圏よりも3割低く設定されていることになる。
熊本県の地域係数も、これまでの地震の頻度などを考慮した結果、熊本市や阿蘇市、下益城郡などで「0.9」、八代市や宇土市などで「0.8」なので、首都圏よりも「低く」設定されている。今回の熊本地震で被災した大分県も別府市や竹田市は0.9で、杵築市や宇佐市は0.8だった。
ちなみに首都圏よりも地域係数が高いのは、1.2の静岡県だけだ。
もちろん、耐震基準を満たしていたからといって、それが「万全である」とも断言できない。1回の震度7の地震ではヒビが入っただけでも、2回もの震度7の揺れや、繰り返される余震で揺れぶられれば、基準を満たした建物だって安全とは言えなくなることはある。
ただ、各地域の耐震基準が、これまで想定した地震の頻度や震度と合わなくなってきているのではないか、という懸念が今回の熊本地震では浮上したことになる。
インターネットには、
「やっぱり震度でどうこうっていうのは、あてにならない気もする」
「震度6強でもいろんなケースがあるからな。どうなるかは建物にしかわからんのではwww」
「運が悪ければ倒壊としか言いようがない」
といった否定的な声に混じって、
「東日本(大震災)でも耐震補強があった建物は残ってたよ。基準は目安でしょ。やらないよりはやったほうがいいに決まっている」
との声も少なくない。