日本人の平均寿命が世界一長いのは腸内細菌のおかげかもしれない。
早稲田大学の服部正平教授の研究チームが、ほかの国々の人々と比較すると、日本人はコメやパンなどの炭水化物から無駄なく栄養分を作る腸内細菌が際立って多いことを明らかにし、国際科学誌「DNA Research」(電子版)の2016年3月6日号に発表した。
ほかの国に比べ、ずば抜けて高い海藻の消化能力
人間の大腸には約1000種類の腸内細菌が数百兆個棲みつき、健康に大きな影響を与えている。研究チームは19~60歳の健康な男女106人の日本人を対象に腸内細菌の大規模な遺伝子分析を行った。そして、ヨーロッパや米国、中国、南米の11か国の人々のデータと比較した。その結果、次のことがわかった。
(1)日本人は善玉菌のビフィズス菌がほかの11か国より多く、悪玉菌のプレボテラ(歯周病の原因にもなる)が少ない。
(2)日本人は炭水化物やアミノ酸を代謝する機能の高い細菌が多い。
(3)日本人は炭水化物を分解するとできる水素を使い、酢酸などの栄養分に作り変える腸内細菌が非常に多い。一方、ほかの国々は水素で不要なメタンガス(ゲップやオナラ)を作る細菌が多い。
(4)日本人は海藻から栄養分を吸収する能力が抜群にあり、日本人の90%に海藻を消化する遺伝子を持つ細菌がいるが、ほかの国々では0~15%しかいない。
また、日本人の腸内細菌には細胞のDNAが傷ついた時に修復する遺伝子が少なかった。これは、逆にいえば細胞のDNAが傷つきにくい腸内環境であるために、修復の遺伝子を持つ細菌が増えなかったとみられる。DNAの損傷は細胞のがん化につながるため、がんになりにくい腸内環境といえるという。
さらに、面白いこともわかった。腸内細菌は食生活や人種の違いが影響すると考えられてきたが、細菌全体を種類別にグループ分けすると、日本人はフランスやスウェーデンにもっとも近く、米国と中国が同じグループだった。