強い地震の後、揺れていないのにあたかも揺れているかのように感じてしまう「地震後めまい症候群」。2011年3月の東日本大震災以降、専門家が研究を進めているが、2016年4月14日からの熊本地震でも被災者の発症が懸念される。
日本大学医学部病院・耳鼻咽喉科医師の野村泰之氏は、2014年に「地震後めまい症候群」の論文を発表した。この中で野村氏は、東日本大震災発生後に東京やその近郊地域で聞き取り調査を実施した結果を示している。地震後に揺れていないのに揺れを感じたという人からは、一般的なめまいのように視界が回るのではなく、身体がグラグラ揺れる感覚があるとの訴えが多かったという。屋内で椅子に座っている時が多く、頭痛や吐き気、歩きにくいといった症状が出た人もいた。18歳以上で約9割、18歳未満で約6割が「揺れていない時の揺れ」があると答えた。乗り物酔いしやすい人や、日常的に運動をしない人は特に感じやすいという。
野村氏は論文で、症状の軽減には室内でじっと座るのを避け、広い屋外に出て視界を広くし、ウォーキングなどで体を動かすことが有効だとしている。症状が長引くようであれば、医師の診察を受けるよう勧めている。