三菱自動車が、軽自動車の「eKワゴン」や「eKスペース」などの4車種で、実際の燃費よりもよく見せるために燃費試験データを改ざんする不正を行っていたことがわかった。
同社の相川哲郎社長は、2016年4月20日17時から国土交通省で開いた記者会見で、「お客さまと関係者に深くおわびする」と陳謝。一方、株価は相川社長が会見することが伝わったことで一時、値幅制限の下限(ストップ安)にあたる前日比150円安の714円まで急落した。
1リットル29.2キロのトップクラス燃費も「ウソ」?
三菱自動車によると、不正があった車種について、2013年6月から生産している軽自動車の「eKワゴン」と「eKスペース」と、同社が受託生産して日産自動車向けに供給している「デイズ」と「デイズルークス」の4車種であることを明らかにした。
16年3月末までに三菱自動車は15万7000台を販売。日産向けには46万8000台を生産。合計で62万5000台が販売されている。
4車種は急きょ、生産、販売を停止し、購入者への補償については今後協議する。
不正は、次期モデルの開発にあたり、日産自動車側が該当する車種の燃費を測定したところ、三菱自動車が届け出たデータとの乖離があり、日産から三菱に通報があって発覚。タイヤの抵抗や空気抵抗の数値を意図的に操作して、実際の燃費より5~10%程度よくみえるように改ざんしていたという。
「eKワゴン」や日産「デイズ」が発売された当時は、軽自動車を含め、燃費競争が激化しており、他社より良い燃費データの実現が強く求められていた。「eKワゴン」も「デイズ」も、クラストップのガソリン1リットルあたり29.2キロメートルを達成している、としていた。
三菱自動車といえば、2000年と2004年に2度にわたる大規模なリコール隠しでブランドが失墜。乗用車からトラック、バスまで、販売台数が激減したほか、当時の筆頭株主だったダイムラー・クライスラーから資本提携を打ち切られるなどの深刻な経営不振に陥った経緯がある。
「国内でどのくらい業績の影響が広がるか見通せない」
会見では、記者から「組織ぐるみ」の可能性を指摘する質問も飛んだが、相川社長は、「燃費試験の不正については担当部署の部長が『自分が指示した』と話している」としたうえで、「真相についてはまだ調査中」と説明。社内で第三者委員会を立ち上げ、「できるだけ早く調査結果を報告したい」と述べた。3か月が目途という。
もし、組織的な不正行為が確認されれば、再び消費者の信頼を失いかねず、経営陣の責任問題や業績悪化につながる恐れがある。また、OEM(他社ブランドの受注生産)提携している日産自動車とも、提携解消という最悪の事態に陥らないとも限らない。
相川社長は業績への影響について、「現状はまだ手が付けられない状況で、国内でどのくらい影響が広がるか見通せない」と話した。
突然発覚した三菱自動車の燃費不正に、インターネットでは、
「まじかよ。最低だな」
「ドイツのこと笑えねぇぇぇ」
「タイヤ脱落事故の反省は、まったくなかったということだな」
「60万台規模かよ。通報した日産は一応まともなのか・・・」
と、厳しい批判が寄せられている。
燃費データは、消費者がクルマを買ううえで最も重視する項目だ。その燃費データを不正したとなると、消費者離れは避けられない。
それでなくとも、軽自動車の販売台数は減少傾向にある。2015年度の三菱自動車のeKシリーズの販売台数は4万3297台で、前年度と比べて25.5%と大きく減少。日産自動車のデイズも16.2%減の14万413台だった。