サンマやサバの缶詰、野菜ジュース...「おいしさ」が大切
食材が限られた状況で、栄養が偏らないようにするにはどうすればよいか。日本食育学会では東日本大震災の経験を踏まえ、「災害時でも健康的な食生活を!」と題した小冊子を作り、災害時の食をこうアドバイスしている。
電気や水道のライフラインが途絶えている段階では、調理が不可能で湯も沸かせない。そこでおにぎりが支給された場合、高齢者は塩分過多が心配なので、ノリをはがしたり、水分を十分にとったりして予防しよう。あわせて、サンマのかば焼きややきとりの缶詰をおかずにしたり、野菜ジュースを飲んだりして栄養のバランスをとるとよい。
避難所では、支給される食料が中心になるが、熱源がある場合は、おにぎりと一緒に温かいみそ汁をつくり、中に缶詰のサバの水煮を入れて食べる。洋食ならパンとレトルトのシチューという組み合わせが考えられる。塩分のとり過ぎを防ぐために、レトルトの量を半分に抑え、代わりに牛乳を加えるのもよい。また毎食、水やお茶を飲むことを忘れてはいけない。水分の不足が高血圧や、「エコノミークラス症候群」のリスクを高める恐れがあるからだ。
震災直後は「とりあえず手に入るもの」を食べるしかない。だがその後は、「限られた食材をそれなりに工夫し、みんなの体が元気になり、前向きな気持ちになれる食事が必要です」と、同学会は指摘する。
「必ず来る!大震災を生き抜くための食事学」などの著書がある宮城大学食産業学部の石川伸一准教授は自身のブログで、2011年12月に仙台市で開いた「災害時の食から今後の備蓄食を考える」と題した講演のスライドを公開している。それによると、備蓄食の条件として、「飲料水が不足していても食べることができる」「温かい」「調理済みで開封してすぐに食べることができる」など11項目を挙げているが、その中でもとくに強調しているのが「おいしい(日常の食事と同様のレベルである)」ことだ。
震災時は、健康だけでなく、生活環境の崩壊などさまざまなストレスに襲われる。石川准教授は「食こそがストレスを緩和するのです。明日への活力を生み出すには、食は絶対においしくなければならないでしょう」と指摘している。