熊本地震発生から、2016年4月19日で6日目となった。多くの人が体育館や公民館などの避難所での不便な暮らしを強いられている。
避難所生活の長期化と共に懸念されるのが感染症だ。2011年3月の東日本大震災でも、ノロウイルスの感染が起きた。当時の経験を生かしたいところだ。
インフルエンザ、肺炎、ウイルス性肝炎、結核の危険が高い
熊本市では4月17日、市内2か所の避難所で下痢やおう吐の症状を訴えた避難者からノロウイルスが検出された。19日現在、他者への感染は確認されていないが、日を追うごとに避難所の衛生状態悪化や高齢者らの体力低下が深刻になっている。
日本感染症学会では、東日本大震災発生直後に作成した「震災および避難生活に問題となる感染症」の解説資料を今回、熊本地震の対策に活用できるようウェブサイトで公開した。それによると、避難生活時では次の感染症に注意する必要がある。「インフルエンザ、肺炎球菌性肺炎の飛沫感染」「感染性下痢症、ウイルス性肝炎の経口感染」「黄色ブドウ球菌感染症、流行性角結膜炎の接触感染」「結核や麻疹(はしか)の空気感染」などだ。この資料を公表した当時、すでにインフルエンザの流行が避難所で見られていた。
東日本大震災では、自宅の消失などにより利用された「一次避難所」は岩手、宮城、福島の3県で2011年12月までにすべて閉鎖された。避難所での感染症の流行については、同年10月11日付の国立感染症研究所の調査報告がある。「急性呼吸器症候群」「インフルエンザ様疾患」「急性胃腸症候群」の散発的な流行にとどまったと書かれ、また麻疹の発症は認められなかった。
被災地域が広範囲で、避難所の開所期間が最長で約8か月だったが、全般的には深刻な問題にならなかった。ただし同研究所は、こんな報告もしている。2011年4月7日、福島県郡山市の避難所で下痢やおう吐の症状を訴える避難者が激増、うち3人からノロウイルスが検出された。発症は212例で、同年4月10日をピークに減少し、20日には終息した。聞き取り調査から「流行初期は避難所が過密状態で汚物や汚染物の処理が不適切だった」「手指衛生が不十分だった」「トイレ掃除が不徹底だった」「十分な換気ができていなかった」などの点が明らかになった。こうした問題点は、今回の熊本地震で早くも指摘され始めている。