熊本県や大分県で断続的に起こっている地震は、震源が熊本市周辺から大分県方面に北東に「進行」するという異例の経過をたどっている。熊本県西部の日奈久(ひなぐ)断層帯に続いて、同断層よりも北方にある布田川(ふたがわ)断層帯も動き、同時多発的に地震が発生しているのが今回の地震の特徴だ。
政府の地震調査研究推進本部では、活断層が起こす地震の確率を活断層ごとではなく地域別に評価する取り組みを始めている。2013年に第1弾として発表された九州地区の評価では、布田川断層を含む「九州中部」で30年以内にマグニチュード6.8以上の地震が起きる確率を18~27%だと見積もっていた。九州の他の地域よりも高く、今になって振り返ると、かなりの高確率だったことを踏まえた対策が必要だったとも言えそうだ。では、次に「危ない」のはどこか。
110ある活断層帯ごとに地震発生確率を予測
一連の地震では、4月14日夜に熊本県益城町でM6.5、最大震度7の地震が発生したのに続いて、16日未明に熊本でM7.3、最大震度6強、同日に大分県の湯布院でM5.3、震度5弱の地震が起きた。
これまでは、全国に約110ある長さ20キロメートル程度の活断層帯ごとに地震が発生する規模や発生間隔に関する長期的な確率を見積もってきた。この「20キロメートル」という長さの断層はM7以上の地震を起こすとされるが、1つの断層が地震を起こす間隔は1000~1万年程度。これを、個々の活断層が30年以内に活動する確率として計算し直すと、数%からほぼゼロだった。だが、M7未満の地震でも被害が生じることや、地域によって活断層に共通する特徴があることから、評価対象を広げて「地域として」活断層が地震を起こす確率を評価することになった。
この第1弾として、13年2月に九州の断層帯を評価した結果が発表された。評価対象も、これまでの8断層帯から28断層帯に大幅に広げられた。それによると、30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は、福岡市などの九州北部が7~13%、大分市や熊本市など中部が18~27%、鹿児島市など南部が7~18%と予測。九州全体では30~42%の可能性で起こると予想している。マグニチュードは最大8.2程度を想定している。
「糸魚川―静岡構造線断層帯」を含むエリアは30~40%
地域別予測の第2弾は関東地区が対象で、15年4月に発表された。全24断層帯を6つの区域に分けて評価しているが、区域ごとにかなりばらつきがある。30年以内にM6.8以上の地震が起こる確率が最も高いのは、静岡・山梨から長野・新潟にかけて南北に延びる「糸魚川―静岡構造線断層帯」を含むエリアで30~40%で、今回の九州中部よりも高い。想定される最大の地震の規模はM8.1に達する。
次に高いのは、静岡、山梨、房総半島南部をぐるっと横断するエリアの15~20%だ。このあと、関東北部は4~5%、伊豆半島や長野県北部は2~3%で、埼玉、東京、千葉から房総半島北部の首都圏の大半をカバーするエリアは1~3%だった。
これらを合わせた関東全域で発生する確率は50~60%と予測されている。
九州と関東の「地域別予測」は、政府の地震調査研究推進本部のホームページで閲覧できるが、熊本地震の発生以降、つながりにくい状態になっている。また、政府は今後、10年程度をかけて、近畿や中部など全国の断層の評価を進める考えだ。