サミット控え「財政出動」に傾く
こうした「応急手当」は、財政出動、すなわち補正予算と一体になっている。本予算の執行を前倒しすれば年度後半に息切れするのだから、当然、補正予算で埋め合わせることになる。選挙にらみで仕掛けていた「一億総活躍プラン」のなかで、公共事業の積み増しのほか、待機児童問題への対応を含む子ども・子育て支援や、額面より多い買い物ができる「プレミアム商品券」の発行による個人消費の喚起などが検討されている。熊本の地震への対応も、当然、盛り込まれることになる。
伊勢志摩サミットは、国際的な一大政治ショーで、議長国として「日本のリーダーシップ」を発揮する絶好の機会であり、選挙へ向けたアピールの場として最大限活用する戦略になる。議長として「率先して財政出動策を示す」と、政府筋は意気込む。
安倍政権は、経済政策の参考にするためとして「国際金融経済分析会合」を開いてきたが、3月22日に招かれた会合で、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授に、安倍首相自ら、ドイツに財政出動での協調を説得するためのアイデアを質問していたことが、後にクルーグマン教授自身のネット上で公開した議事録で明らかになっている(政府はオフレコとして内容を公表していなかった)。ドイツは財政余力があり、経常黒字国だが、財政規律を重視する立場から財政出動には否定的といわれる。「安倍首相はメルケル独首相と信頼関係を築いているから、協力を引き出せる可能性がある」(国際経済筋)との声もあり、これから1カ月、どう詰めていくかも、大きな注目点だ。