過疎地や離島の酪農家がいなくなる
しかし、この規制改革会議の提言に対し、JA全中(奥野長衛会長)は猛反発している。森山裕農水相や自民党を突き上げ、自民党は農林水産戦略調査会などの合同会議が4月14日、「不十分な検討で結論を出すことは受け入れられない」と、「自由化ノー」を決議した。
反対の理由はこうだ。季節による需要変動に対応した需給調整機能についてはすでに書いたが、農協などは「販売先が自由に選べるようになれば、高く売れる飲用が優先され、加工用との需給バランスが崩れる可能性がある」と懸念する。そもそも、日持ちしない生乳は短時間で乳業メーカーに引き渡す必要があり、個別に取引すると安く買いたたかれたり、輸送コストがかさんだりするため、指定団体が酪農家から生乳を集めて一括して輸送し、メーカーとの価格交渉を担うことが必要というのだ。
この結果、制度が廃止されると、都市圏に近く飲用生乳の需要がある生産者と、遠方で加工用に限られる生産者とで収入に差が生まれる懸念もあるとし、「過疎地や離島で酪農を営むには指定団体制度は欠かせない」(九州の酪農家)という主張になっている。小規模、零細の農家のために規制が必要という農業に共通する問題というわけだ。
そうしたなか、今後の政局を占う衆院北海道5区補欠選挙が自民と野党統一候補の一騎打ちで4月24日の投票日に向けて戦われている。北海道は日本一の酪農王国で、生乳の補助金の8割を受けるホクレンのおひざ元だけに、「このタイミングでなぜ生乳自由化論が政府から出るのか」と、与党関係者からボヤキも聞こえる。夏の参院選挙もにらみ、自民党が自由化容認に踏み切るのは容易ではないだろう。
規制改革会議が6月の答申に、生乳自由化をどこまで具体的に盛り込めるか。政治との綱引きが激しくなりそうだ。