「新たなメニューの開発やキャンペーンで集客力を高めていきたい」
吉野家の伸び悩みは、来店客数の落ち込みも要因。牛丼(並盛り)の価格を300円から380円に引き上げた2014年12月以降、16年1月までの来店客数(既存店ベース)は14か月連続で前年実績を下回った。うるう年で営業日数が1日多かった16年2月の来店客数は前年を上回ったものの、3月は再びマイナスに転じてしまった。
吉野家HDは、「値上げで客単価はプラスに転じましたが、来店客数が戻りきっていないのが現状。(牛丼の値上げなどで)足が遠のいてしまった人に、再び来店してもらうためにも新たなメニューの開発やキャンペーンで集客力を高めていきたい」と話す。
4月6日から、4年ぶりに復活させた「豚丼」(並盛、税込330円)はその一つ。米国産牛肉問題で牛丼の販売を休止した2004年3月から販売。その後、牛丼の販売再開や新商品の投入もあって11年12月で販売を終了していたが、「多くのお客様からの要望があったのに応えた」という。
さらに、煮卵や牛煮込み、牛皿などをおつまみにビールやお酒が飲める「吉呑み」サービスの実施店を、5月末をめどに全店(約1200か店)に拡大する。
「吉呑み」は2015年4月に始めたサービスで、現在約360か店で実施。おつまみの価格は100円~490円で、1000円前後の低価格で「ちょい呑み」気分が味わえると、ビジネスマンらに人気。都心部の駅前店などの立地が中心だが、郊外のロードサイド店舗に広げることで、客数と売り上げの増加につなげる。
吉野家HDは、「飲酒運転への懸念などがあり、郊外店ではやめていたのですが、実験店舗で検証を重ねた結果、とくにトラブルもなかったため、また現在もビールなどを置いていることもあり、拡大に踏み切ることにしました」と説明する。
吉野家としては、夜の時間帯の来店客数が日中と比べて少ないだけに「吉呑み」で集客力を高め、おつまみなどの販売を増やすことで客単価をアップする狙いがある。
たしかにインターネットには飲酒運転を懸念する声がないわけではないが、吉野家HDは「お店のほうにはそういった(飲酒運転を懸念する)声は届いていません」という。
なかには、
「腰落ち着かせて飲むわけじゃないんだから、いいんじゃないの」
「食べながらちょと飲むだけで宴会するわけじゃないだろ。『昭和』の食堂ってそんな感じだったけどな」
「昔から酒とビール売ってただろ。牛皿とあうべさ」
などと、容認する声も寄せられている。
吉野家HDは、豚丼などの新メニューの投入や牛肉価格の下落などで、2017年2月期の売上高は前期比3.9%増の1930億円、営業利益が2.1倍の34億円、最終利益は2.3倍の19億円と、増収増益を見込んでいる。