政府は、日本を訪れる外国人旅行者の数について、東京五輪が開催される2020年に2015年の約2倍となる4000万人に引き上げる新しい目標を決めた。訪日客が買い物などで使う消費額の目標も、2倍超の8兆円に増やした。
有識者らで構成された「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(議長・安倍晋三首相)が2016年3月末、具体的な数値目標や実現に向けた戦略をまとめた。政府は観光を成長戦略の柱に掲げており、安倍首相は会議で「観光は国内総生産(GDP)600兆円に向けた成長エンジン。観光先進国に向けた対策を講じていく」と述べた。
2030年目標、「3倍」の6000万人に
訪日客は1980年代以降、円高基調だったこともあって長らく停滞し、2003年からのビジット・ジャパン・キャンペーン(外国人旅行者の訪日促進活動)で年間1000万人の目標を掲げたが、スタート時の524万人から伸びたとは言え、2012年でも836万人にとどまっていた。安倍政権はこれを、2020年までに2000万人に増やす目標を掲げたが、円安基調やビザ発給要件の緩和などを背景に急増し、2015年は東アジア諸国を中心に前年比約47%増の1973万人と過去最高記録を更新。2000万人早期達成が確実になったことから、2015年11月以降、「構想会議」で目標見直しに向けて議論していた。
新目標では2020年以外に2030年の目標も設定した。旅行者は2015年の3倍の6000万人に、消費額は4倍超の15兆円と大幅に上積みした。
これらの目標を実現するための施策として、ビジット・ジャパン・キャンペーンで「促進重点国・地域」と指定して重視する20か国・地域のうち、今もビザが必要な中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアの5か国を対象に発給要件を緩和する。迎賓館など公的施設を一般開放したり、国立公園5か所では規制緩和して宿泊施設の誘致を進めたりする。
また、快適な観光のために無料Wi-Fiを整備し、公共交通機関を海外からでもネット予約できるようにする。主要な観光地でクレジットカードを使えるようにして、訪日客が買い物しやすくする。