不確実な危機に対応するのに有利に働く
電気ショックによるストレスの度合いを測るため、被験者の瞳孔の大きさの変化を調べた。人間は痛みや恐怖を感じると、脳から「ストレスホルモン」のノルアドレナリンが分泌され、瞳孔がカッと開くことを利用した。
こうして45人に数百回実験を繰り返した結果、驚くべきことがわかった。被験者が「ヘビがいる」と当てて電気ショックを受けた時のストレスと、予想が外れて電気ショックを受けなかった時のストレスは、ほとんど同じだった。予想どおりに感じた体の痛みは意外に弱くて、予想が外れた時の心の痛みとあまり違わなかったということだ。
これはどういうことを意味するのか。ドバーカー教授はこう説明する。
「不確実性がストレスに及ぼす影響が非常に強いことを物語っています。電気ショックを受けるか受けないか確実に分かっている場合より、分からない場合の方がはるかに身心に悪いということです。実験では、不安のレベルの高い人ほどヘビがいることを当てるゲームの得点が高い結果が出ました。人間が進化の過程で、生きる上ではストレスが不確実な危機に対応するのに有利になるよう働いてきたことを示しています」。