東芝は「国が助けてくれる・・・」
パソコン事業の統合のゆくえに、気が気でないのが東芝だろう。そもそも、東芝、富士通、VAIOの3社のPC事業の統合は、不正会計問題を受けた東芝の構造改革をきっかけに浮上した。
「ダイナブック」ブランドで、世界で初めてノートパソコンを発売した東芝だが、スマートフォンやタブレット型端末の普及によるPC市場の縮小に伴い、収益が悪化。さらにはPC事業の「利益水増し」まで発覚した。
東芝は2016年3月、経営再建に向けた事業計画を発表。不採算事業の見直しや益出しのための子会社売却、15年3月期に比べて3万4000人を削減するリストラ策を打ち出し、「17年3月期には、すべての事業の黒字化を果たす」(室町正志社長)としていた。
不採算部門の売却を急ぎ、成長領域のはずの医療機器子会社の東芝メディカルシステムズをキヤノンに売却。白物家電事業は中国・美的集団に売却した。
そうしたなか、PC事業は15年度中に4500人から3200人に人員を削減。4月1日付で分社化した「東芝クライアントソリューション」に、約2600人が移った(残り600人は、新会社に移管予定の中国の工場に在籍)。東芝としては、売却しやすくして、富士通やVAIOとの統合交渉に懸けていたとみられる。
もし統合が白紙になれば、事業統合や売却などの、新たな「相手」を探す必要に迫られる。また、事業計画も見直す必要が出てくるかもしれない。
ただ、企業アナリストの大関暁夫氏は、「白紙となれば、その責任は東芝の経営陣にある」と指摘。「経営再建が道半ばだというのに、医療機器や白物家電の売却で、なんとなくひと息ついてしまった感じがありますよね。無理して売らなくてもいいんじゃないか、シャープのときと同様に『日の丸統合』となると、国が助けてくれる、自分たちが潰れるわけがないと。おそらく経営者に危機感がないんですね」と話す。
一方、東芝はPC事業について、「決まっていることは、『6月までに決定する』ということだけです」という。