米国の白人医学生の半数が、アフリカ系米国人(黒人)について「白人より痛みを感じない」などといった医学的に間違った知識を持っているという衝撃的な調査がまとまった。
米バージニア大学のチームが、米科学アカデミー紀要(電子版)の2016年4月6日号に発表した。米の医療現場では、黒人患者への差別的な治療が問題になっているが、研究チームは「こうした誤解によって説明がつく」とコメントしている。
黒人に鎮痛薬が与えられる例は白人より39%少ない
同じ米バージニア大学の別の論文によると、白人の子どもは7歳頃から「黒人は白人より体の痛みをあまり感じない」と信じ始める傾向が強いという。また、米小児科学会の調査によれば、腹痛などで救急治療室に運ばれた子どものうち、黒人の子に鎮痛薬が与えられる例は、白人の子より39%少なく、また投与される場合も分量がはるかに少ないというデータがある。
こうした「格差」がなぜ起こるのかを調べるため、研究チームは、米国内の医学生、および研修1年目の若い医師(すべて白人)計222人を対象に実験とアンケート調査を行ない、「白人と黒人に関する医学的知識」を検証した。
実験では、「車のドアに手を挟んだ」など複数の事故を想定、それぞれ黒人と白人を患者にしたシナリオの症例報告を作った。それを222人の「医師の卵」らに読ませ、患者の痛みを1~10点の10段階で評価させた。
また、アンケート調査で、黒人と白人の生物学的な違いに対する問いに回答させた。質問の中には、偏見に基づく間違った記述と、医学的に正しい記述が混じっていた。たとえば、間違っている記述の例では次のようなものがある。
(1)黒人は白人に比べ、神経末端の感度が低い。
(2)黒人は白人に比べ、血液が凝固する速度が速い。
(3)黒人は白人に比べ、生殖力が著しく高い。
(4)黒人は白人に比べ、免疫力が強い。
(5)黒人は白人に比べ、皮膚が厚い。
また、正しい記述の例では次のようなものがある。
(1)黒人は白人に比べ、心臓病を発症するリスクが高い。
(2)黒人は白人に比べ、骨の密度と強度が高い。
(3)黒人は白人に比べ、脊髄疾患にかかるリスクが低い。