千葉県市川市内に予定されていた私立保育園が住民の反対を受けて断念していたことが分かり、ネット上で論議になっている。これでは、騒ぎになった「保育園落ちた」問題は、解決できないというわけだ。
待機児童を減らすには、保育園を増やすしかない。しかし、それもままならない事態になっているらしいのだ。
「道路狭くて危険」「子供の声がうるさい」
千葉県松戸市内の社会福祉法人は、県の認可保育園を2016年4月にオープンさせる計画を前年8月末に許可された。そして、9月に入って、開園を知らせる看板を予定地に立てたが、市川市のこども施設計画課などによると、予定地前の道路に面した家に住む十数人の住民がその直後から反対運動を始めた。
道路が狭く、園児の親が車や自転車で送り迎えして通行が増えると危険だというのが主な理由だった。一部の住民からは、「子供の声がうるさい」といった懸念の声も上がった。住民らは、署名活動を始め、市などに計画撤回の要望書も出すようになった。高級住宅地でほとんどが一軒家に住んでおり、定年退職した高齢者や子供のいる世帯など様々だった。
社会福祉法人では、住民らに複数回にわたって説明会を開いた。駐車場を設けたり、送迎も限らせるとしたりしたほか、防音壁の設置も提案した。しかし、住民の反対は止まず、社会福祉法人でも、建設工事に入ることもできないまま、3月下旬に開園を断念することを決めた。
社会福祉法人の理事長は、取材に対し、次のように答えた。
「住民の方は、若い人もおられましたが、多くは50代以上の方でした。こちらからは、様々な提案をしましたが、なぜダメなのかについては分かりませんでした。市からは、許可が出てから住民に説明するように言われていました。近隣の協力がありませんと保育園の運営は難しいので、非常に残念という思いでいます」
厚労省調査では、騒音と感じる人が3分の1も
看板を立てて以来、「いつから始まるのか」といった問い合わせが何十件もあったといい、社会福祉法人の理事長は、「保育園不足は、深刻だと思います」と話す。
実は、理事長は、別会社の運営で千葉市内の私立保育園も14年4月にオープンさせている。そこは、4車線の道路に面し、周囲はオフィスビルのため、特に問題なく開園できたという。理事長は、「ほかに候補地があれば、また保育園を作りたい」と言っている。
保育園を巡っては、住宅地に建てられることも多いことから、住民の反対運動が起きて、開園が延期するケースも過去に報じられた。開園してからも、園児の遊び時間を制限したりする保育園も見られる。
特に、家にいることが多い高齢者が難色を示しているともされるが、厚労省が15年3月に行った調査では、騒音だと感じるのは40代の女性が比較的多かった。とはいえ、保育園が騒音と感じる人はかなりの数に上っており、調査した人全体の3分の1にも上っていた。
ネット上でも、「うるさいのは事実だろ」「家の隣に保育園出来たらキツイ」「住宅街とは相性が悪いでしょ」といった書き込みが多く見られる。一方で、保育園が足りていない現状に理解を示す向きも多く、「『御互い様』の精神が欠如してる」「許容してこそ大人だよ」「将来ある子供を優先しろ」といった意見も出ていた。