即入院決定、3時間ほどの手術
医師の説明によれば、心臓の冠動脈の1本が根元のあたりで詰まっており、その先の血管が見当たらないという。病名は「急性冠症候群(不安定性狭心症)」と診断された。医師は「いつ倒れてもおかしくないですよ」と話すが、明確な自覚症状がないAさんは、今ひとつ事態を飲み込めない。
医師「今日、これから入院していただきます」
Aさん「そんなにひどい状態なんですか。最近、野球をやりましたけど、何ともなかったですよ」
このひと言で、医師は「え、野球やったの」と驚きながら表情がこわばったという。Aさんにとっては、何も準備していないまま急に入院と言われて戸惑った。職場にきちんと休暇を申請したいし、家族にも説明するので「1週間ほど待っていただけませんか」と頼んだが、医師はひとこと、こう告げた。
医師「命の保証ができませんよ」
Aさんもこれで、「医師にこう言われると、さすがにまずいなと思って」指示に従った。
入院から2日後、手術が行われた。左手首の血管からカテーテルという医療用の管を入れて、詰まっている個所を確認。その後、血管を内部から広げる「ステント」という器具を入れた。
Aさん「私はベッドの上で天井を見たまま体は動かせませんが、部分麻酔なので周りの会話は聞こえます。手術中、医師の『いきますよ』のひと言で突然、看護師らに体を押さえられました。おそらく器具を体内に入れる際に患者が暴れないようにする措置でしょうね」
3時間ほどで終了。その後も、特に痛みを感じることはなかった。経過は良好で、1週間ほどで退院した。一度詰まった血管は、措置後も詰まりやすくなるので、しばらく経過観察が続く。