不動産バブルの苦い経験を生かせるか
この不振をいかに立て直すか。大前提として、損切りを短期で終わらせることだ。バブル崩壊後の地価下落局面で特別損失を繰り返し、いつまでも「打ち止め感」が確認できず、市場の不信を買った苦い経験がある。その点、「今回の多額の減損計上で弱材料の出尽くし感もある」(アナリスト)という指摘がある。
事業再編では、伊藤忠が一つの参考になるのは間違いない。2013年に「非資源ナンバーワン」を掲げ、2015年に米シェール事業から撤退する一方、食料や繊維の強化を推進。金融、不動産、資源エネルギーなど幅広い事業を展開する中国の国有複合企業グループ「中国中信集団(CITIC)」と2015年に資本提携し、その効果が早くも出始めている。
とはいえ、資源ビジネスをやめればいいというわけではない。「(資源開発は)20~30年単位でのビジネスで、供給責任もある」(小林氏)ため、すぐに撤退・縮小する考えは各社にもない。資源価格は当面、低迷するとの見方が強いが、新興国需要の伸びで価格がいずれ反転する期待もある。三井物産は引き続き資源を重要分野と位置付け、「現状の市場環境を好機ととらえ、優良資産買収とコスト削減を追求する」方針だ。
一方、三井物産は米国でシェールガスの開発だけでなく、安価なガスを原料にした化学品の増産に動き、ガス価格の下落を逆に生かして稼ごうとしている。資源という「上流」だけでなく、製品に至る「川下」まで事業を一貫させ、価格変動リスクを分散させる戦略だ。
要は、資源と非資源ビジネスをどう組み合わせるか。各社の戦略の違いが今後の業績を左右することになる。