「酒を飲むから健康」ではなく「健康だから飲める」
クリスティー博士は「病気による禁酒を考慮しなかったことが、飲酒の健康への影響を見誤らせてきました。また、適度な飲酒のおかげで健康になるという見方も、原因と結果を取り違えています。健康だからお酒を飲めるわけで、その逆ではありません。過剰に酒を飲むとアルコール依存症になることを考えると、ほとんどの人にとって飲酒量は少ないほどよいのです」と語る。
また、今回の研究で、もっとも健康によい「適量の飲酒」は「10日ほどにアルコール1ドリンク未満」だとわかった。「1ドリンク」とは、医学用語で約10グラムのアルコール量をいう。ビールなら中ビン半分、日本酒なら0.5合にあたる。これでは、ほとんど飲まないに等しいではないか。
米の健康医療紙「ヘルスニュース」2016年3月31日号では、クリスティー博士の論文の紹介とともに、専門家たちのコメントも載せている。米ボストン大学のカーティス・エリソン教授は「人や動物の実験でも、適度な飲酒(特にワイン)が動脈硬化や冠動脈疾患のリスクを下げることが科学的に証明されている」と反論した。一方、カナダ・トロント大学のダナ・ラナ教授が「飲酒に有益な効果があることは認めるが、乳がんなど様々な病気のリスクが高まるなど、効果が相殺されることも確かだ」と賛成するなど、専門家の間で評価が分かれている。