無料通話アプリ「LINE(ライン)」の運営会社が提供するスマートフォン向けゲームで利用されている一部の課金アイテム(道具)をめぐり、LINEが関東財務局から立ち入り検査を受けていたことが明らかになった。毎日新聞が2016年4月6日朝刊の1面トップで「LINE立ち入り検査」という見出しで報じたことを受け、LINEが立ち入り検査の事実を認めた。
毎日新聞は、ゲーム上の「通貨」や電子マネーなどの決済サービスを規制した「資金決済法」にLINEが抵触する疑いがあったとして、立ち入り検査が行われたと報じている。これに対して、LINEは立ち入り検査を「前払式支払手段発行者に対して数年に一度定期的になされているもの」だと説明。位置づけが大きく異なっている。ただ、LINEの発表文には関東財務局と「協議中」という文言が複数回登場しており、アイテムの位置づけについて両者には見解の相違もあるようだ。
毎日「未使用残高が約230億円、とても供託できる額ではない」
資金決済法では、プリペイドカードやオンラインゲームの「通貨」など、事前に金銭を支払って後に決済する方式のものを「前払式支払手段」と定めている。「通貨」の発行会社が経営破綻した時のために、未使用残高が1000万円を超える場合は、その半分を「発行保証金」として法務局などに供託することを求めている。
今回問題とされたのは、LINEが2012年に公開したパズルゲーム「LINE POP」(ライン・ポップ)のアイテム「宝箱の鍵」。毎日新聞によると、15年5月にゲームの担当者が社員に対して
「(「宝物の鍵」の)未使用残高が約230億円という莫大な額で、とても供託できる額ではありません」
というメールを送ったという。アイテムが「前払式支払手段」にあたる可能性を指摘した、というわけだ。その後、アイテムの用途を制限するなど仕様を変更し、7月24日付の役員向け内部報告書には「仕様変更をもって通貨に該当しないという立場を取る」と記載。こういった経緯から、毎日新聞の記事では仕様変更で供託を免れたと指摘している。
LINE「キャッシュアウトするとしても数千万円程度」
これに対し、LINEは4月6日午前、毎日新聞の記事に反論するコメントを発表した。それによると、2015年5月にスマートフォン向け全タイトルに対して「事後チェック」を行う中で、「宝箱の鍵」について「初期段階でのメールによる問題提起」を踏まえて弁護士など協議した結果、「前払式支払手段」には該当しないと判断。それでも「法令上の判断基準が明確でないことから、より保守的な対応を行う」ことにしたため、7月に仕様変更を行ったと説明している。
こういったことから、「規制の適用を意図的に免れ、同法に基づいて必要とされる供託を逃れようとした」といった「事実は一切ございません」と主張している。
供託金については、現金で供託しているのではなく銀行との間で保全契約を締結して資産保全していると説明。
「キャッシュアウトするとしても数千万円程度であって、本件が当社の財務状況に与える影響は軽微」
だとしている。
LINEは発表文で「現在、関東財務局とこの点につき協議中」とも言及しており、「宝箱の鍵」が「前払式支払手段」にあたるかどうかについて当局の判断が変われば、経営に影響を与える可能性がある。