2016年の公示地価(1月1日時点の地価)の公表で、好調な高級マンション需要が住宅地の地価を下支えしているとの見方が広がるなか、東京都心の新築マンション市場に異変が起っている。
東京都心の高級マンションは、相続税対策を狙う国内富裕層と「爆買い」ニーズの中国人などが購入するケースが目立ち、販売価格も吊り上っている。
地価押し上げ 地価上昇も外国人頼み・・・
国土交通省が2016年3月23日に公表した2016年の公示地価によると、15年1月から1年間の地価の動きは、全国平均では住宅地、商業地、工業地のすべての用途平均の変動率が15年までの下落から上昇に転じた。そのうち、住宅地はわずかに下落しているものの、下落幅の縮小傾向が継続しており、全国平均で東京、大阪、名古屋の3大都市圏ではほぼ前年並みの小幅ながら上昇した。
住宅地で全国1位の上昇率となった地点は、北海道倶知安町。16年1月1日時点の地価は前年比19.7%上昇して、1平方メートルあたり8500円だった。倶知安町は著名なリゾートエリアであるニセコにある別荘地で、「もとの水準が低いので変動率が高まることはありますが、倶知安町は15年時点で、すでに道内では札幌市などを押しのけて(変動率では)トップでした」と、町役場は話す。外国人による別荘地への需要が旺盛で、コンドミニアムなどへの投資が活発化していることから、地価が上昇しているという。
中国人などの外国人旅行客らの流入の増加は、いまや商業地のみならず、地方の住宅地の地価をも押し上げる傾向にあるようだ。
一方、住宅地の中でも東京の上昇(変動)率は小幅ではあるものの、3年連続で上昇した。23区内の上昇率は2.8%で、すべての区が上昇を続けている。さらに、千代田区は9.4%、中央区9.7%、港区は6.3%の上昇で、23区内で5%以上の上昇率を示したのは、この3区と目黒区だけ。あるシンクタンクの不動産アナリストは、「都心部ではマンション需要が堅調な一方で、供給が少ないので、高い上昇率を示している」とみている。
それでなくても、建築費の高騰や国内外の富裕層による積極的な投資によって、都区部のマンション価格は上昇の一途にある。不動産経済研究所によると、2016年2月に首都圏で発売された物件の平均価格は5773万円で、9か月連続の上昇。なかでも、東京都区部の平均価格は前月から8.8%減ったものの、6248万円だった。
都区部の地価高騰とマンション販売の現状について、その不動産アナリストは「都心の新築マンションの平均価格が6000万円を超えているのは、高額な高級マンションが相次いで分譲され、上値を引っ張ってしまったことが原因ですが、一般の給与所得者ではすでに手が出ない価格帯になっていることは事実です」と、ここ数年の販売価格の高騰を憂いている。