東京メトロの半蔵門線で、ドアにベビーカーがはさまったまま電車を出発させ、100メートルほど引きずって線路に落下させる事故があった。2度にわたって非常通報ボタンが押されたが、車掌は非常ベルには気付きながら電車を停止させず、ベビーカーはドアにはさまったまま引きずられた。しかも車掌は、その約15分後に乗務から外されて上司から指摘されるまで、ベビーカーがはさまっていたことを把握していなかった。
ベビーカーに赤ちゃんは座っていなかったため、けが人はいなかったが、石井啓一国交相は「一歩間違えれば大事故につながりかねない事案」だとして原因究明と再発防止策の策定を指示した。
車内とホームで非常停止ボタンが押される
事故は2016年4月4日15時1分ごろ、半蔵門線の九段下駅で起きた。中央林間発押上行き(10両編成)の6両目付近から母親と子どもが電車に乗り込み、その直後に父親がベビーカーを押しながら乗ろうとしたところ、ドアが閉まって前輪のパイプが挟まった。電車はそのまま動き出し、ベビーカーはそのまま約100メートルにわたって前方に引きずられてホームの端にある柵に激突。この衝撃でベビーカーはドアから外れ、落ちて壊れた。
通常、ドアが開いているときにはドア上部の赤いランプがつき、車掌はランプが消えたことでドアが正しく閉まったことを確認する。大きさが1.5センチ以上のものが挟まった場合はランプが消えないため、車掌はドアが正しく閉まっていないことに気付くことができる。だが、今回はさまったベビーカーの部品は1.5センチより小さかったためランプが消え、車掌は異常に気付かなかった。
車掌は10両目の最後尾に乗務しており、モニターや目視でホームに異常がないか確認した上で運転手に出発の合図を送る。東京メトロ広報部によると、ベビーカーがあった6両目付近は、最後尾から目視で確認すべき範囲だ。だが、車掌はベビーカーの存在に気付かずに出発の合図を出してしまった。
電車が動き出してからも判断ミスがあった。電車が100メートルほど走った時点で車内にいた母親が非常通報ボタンを押し、さらに50メートル走ってからホームにいた人も非常停止ボタンを押した。それにもかかわらず、電車は通常の速度で走り続けた。車掌は2回にわたって電車を止めるチャンスを逃していたことになる。