「日本カー・オブ・ザ・イヤー」選考委員を長く務めたことで知られる自動車評論家の伏木悦郎さん(64)が、「SNSで品位を損ねる発言をした」と所属団体から除名処分を受けた。これに対し、伏木さんは、自動車ジャーナリズムに警鐘を鳴らしただけだと反論している。
伏木さんが所属していたのは、半世紀近い歴史があり、100人余がメンバーになっている任意団体の「日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)」だ。
評論家仲間に「ポチの振る舞いは止めんか」
伏木さんは、除名の経緯について、2016年4月2日の有料メルマガで明らかにした。
それによると、伏木さんは、協会内で度々トラブルに見舞われてきた。2014年1月ごろには、協会メンバーの1人がある日本の大手自動車メーカーの「御用記事」を書いていると不満を持ち、メンバーのフェイスブックに書き込んだ。メーカーの社長名を呼び捨てで「○○○ごとき」と揶揄し、メンバーを「ポチの振る舞いは止めんか」と非難したのだ。このことが協会幹部の知るところとなり、「品性を疑われる」と注意された。
そして、15年10月5日には、ドイツの大手メーカー関係者が自動車ジャーナリストに高額報酬を支払って、このメーカーを擁護する記事を書いてもらい、日本の別のメーカーについてはネガティブリポートをさせているとツイッターで「暴露」した。伏木さん自身にも、このメーカーに縁の深い知人からオファーがあったが、「国を売る感覚に抵抗あり断った」という。そのうえで、「金に転んだ輩は必ずいる。擁護する者を疑え!」と呼びかけたのだ。
これに対し、前出とは別のメンバーがネット上でメーカー擁護などを疑われていることを知り、伏木さんのフェイスブックに「自分ではない」と反論した。このときは、2人のやり取りもネット上で話題になっている。
「もう笑うしかない。除名だってさ俺」
伏木悦郎さんの一連の発言は、日本自動車ジャーナリスト協会で問題になり、16年3月28日の理事会で審議されることになった。協会では、伏木さんのツイートについて話を聞きたいとしたが、伏木さんは、「何についての問い合わせか不明」として出席に応じなかった。
理事会は、伏木さん欠席のまま審議が行われ、伏木さんが15年10月20日のブログで協会幹部に悪態をついていたことも問題にされて、伏木さんは除名処分になった。
これに対し、伏木さんは、3月28日のツイートで、「もう笑うしかない。除名だってさ俺」「会の健全化を願って自省を促そうとしたことが脛に傷持つ面々の不興を買った?」などと協会側に反論している。
この日の年次総会まで任期だった協会の日下部保雄前会長は4月4日、J-CASTニュースの取材に対し、理事会が伏木さんの除名を決めたことを認めた。
「ジャーナリストですので、メーカーに対しては色々なことが書ける権利がありますが、品位が疑われるような表現は別問題です。それもそうですが、お金をもらって捏造記事を書いていると疑いや不信感を持たせる発言をしていたのが大きな問題です。メンバーの中に、そんな人がいるとは思えません。常識で考えて、メーカーの宣伝はありえませんし、私は、ないと信じていますよ」
ただ、日下部さんは、伏木さんは永久追放ではないといい、その活動は否定するつもりはなく、復活はありえるという。次の理事会まで伏木さんの除名処分を留保するつもりだったが、伏木さんが次の理事会出席についても拒んだため、そのまま処分が決まったと言っている。