肝臓は悪化するまで自覚症状がない「沈黙の臓器」と呼ばれるが、実際には異変を伝える様々な信号を初期の頃から発している。「体がだるい」と「手足がつる」がそれだが、最近、「全身のかゆみ」も意外に多いことがわかってきた。
2016年3月15日東京都で開かれたプレスセミナー(大日本住友製薬主催)で、虎の門病院肝臓センター分院長の熊田博光氏と東都医療大学の鈴木剛教授が「知られていない肝臓のかゆみ」をテーマに講演した。肝臓病患者の3人に1人がかゆみに苦しんでいた。どうすれば早期発見につなげられるか。
皮膚に異常がないのに、たまらなくかゆいと要注意
熊田氏が診療している虎の門病院の患者342人の調査によると、特に「かゆみ」の発現率が高かったのが原発性胆汁性肝硬変で、54.5%の患者が自覚症状にかゆみがあったという。肝臓がんやC型肝炎、アルコール性肝炎なども含め、肝臓病全体で35.7%の人が自覚症状に「かゆみ」を挙げている。
肝臓病に一番多い肝炎患者2138人を対象にした別の調査でも、「かゆみ」は「体がだるい」(25.5%)に次いで多い自覚症状が「かゆみ」(22.4%)だった。
ひとことで「かゆみ」といっても、どんな症状になると肝臓病を疑えばいのだろうか。鈴木教授はこう説明した。
「高齢になると皮膚がかゆくなる『老人性皮膚掻痒(かくよう)症』が増えますが、肝臓病が原因のかゆみはすべての年齢にみられます」
そして、次のような特徴があるそうだ。
(1)見た目には皮膚に異常がないのにかゆい。
(2)全身がかゆくなる。
(3)かいてもかゆみが治まらず、夜も眠れないほど。
(4)アレルギーや乾燥肌によるかゆみに効く抗ヒスタミン薬や鎮静薬が効かない。