エゴマは青ジソに似たシソ科の植物だ。葉は香草として韓国料理によく使われる。この種子を搾って作られる油が「エゴマ油」だ。東北地方では昔から色々な料理にかけてきたが、食べると10年長生きできるというので、「ジュウネン」と呼ばれてきた。
エゴマ油には、いま医学界が注目している「α(アルファ)リノレン酸」という脂肪酸が油成分の60%も含まれている。このαリノレン酸がいかにすごいパワーを持っているか、最新の3つの研究を紹介しよう。
魔法の成分「αリノレン酸」が「血管の万能薬」に変わる
2016年2月、ドイツ・ベルリン医科大学の発表によると、αリノレン酸をアルツハイマー病の患者に6か月間飲ませると、記憶力が改善した。アルツハイマー病などの認知症は、現在、治療方法が確立されていない。いったん発症したら、対処療法で進行を遅らせるしかないのが現状だが、記憶テストの成績が向上したとは驚きだ。ただし、言語能力には改善はみられなかった。
同じく2016年2月、米ハーバード大学公衆衛生大学院の発表によると、10年間にわたって5万人以上の女性を対象にした調査では、とりすぎは体によくないリノール酸(大豆油などに多い)を控えてαリノレン酸を多くとると、うつ病になる人が少なくなった。
2015年7月、医薬基盤・健康栄養研究所(大阪府茨木市)の発表によると、マウスの実験でαリノレン酸に食物アレルギーを防ぐ効果があることをわかった。遺伝子操作で食物アレルギーを持つマウスをつくり、エサの中にαリノレン酸を混ぜると、食物アレルギーに伴う下痢の発症率が、普通のエサを食べたマウスに比べ10分の1に減った。
なぜ、αリノレン酸はこれほどの力をひめているのか。専門医のサイトをみるとこう説明している。αリノレン酸は体内に入ると、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)に変わる。EPAとDHAは「血管の万能薬」といわれ、ともに青魚にたくさん含まれており、コレステロール値を下げ、血液をサラサラにする働きがあるのでご存知の人も多いだろう。動脈硬化や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を防ぐ効果があるのだ。
厚生労働省は健康の目安として1日にとりたいαリノレン酸の量を2グラムと定めている。それを魚でとろうとすると、サバ半尾以上を食べなくてはならないが、エゴマ油だと大さじ1杯程度ですむ。