2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の旧計画案でデザインを手がけた建築家のザハ・ハディド氏が、心臓発作のため亡くなった。65歳だった。2016年3月31日(現地時間)、氏の事務所が発表した。報道によると、ザハ氏は今週初めから気管支炎を患い、米マイアミの病院で治療を受けていた。
新国立をめぐる声明が1月にも取り沙汰されたばかりのザハ氏。日本で訃報のニュースが報じられたのが、たまたま4月1日(エイプリルフール)と重なったこともあり、ネットの注目を集めている。
「建築界のノーベル賞」プリツカー賞を女性で初めて受賞
総工費の高騰などを理由に、ザハ氏デザインの旧計画は15年7月に白紙撤回されたが、ザハ氏は新たな計画案を募るコンペに9月、参加を表明していた。しかし、施工業者との折り合いがつかなかったことなどを理由に断念した。12月に建築家の隈研吾氏がデザインした案の正式採用が決定すると、「スタジアムのレイアウトや座席の配置などが、オリジナル(編注:旧計画)のデザインと驚くほど似ている」と批判し、16年1月にはザハ氏事務所は法的措置も辞さない旨を表明していた。
このように、最近まで声を上げるザハ氏の姿が伝えられていただけに、日本で訃報が報じられた4月1日朝、ツイッターには
「突然すぎてビックリ」
「起きて1番の衝撃」
「ザハ...残念すぎる...」
「エイプリルフールネタかと思った」
「ついこの間まで新国立競技場問題に元気にしゃしゃり出てた気がするんだが...」
などと驚く声であふれた。
ロンドン五輪で使用された「アクアティクス・センター」をはじめ、ザハ氏は流線形の斬新なデザインを施した建築をいくつも生み出した。04年には「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞を女性で初めて受賞した。
「品格とオーラを感じる建築家でした」
日本の建築界でも評価は高く、建築家で東洋大学建築学科専任講師の藤村龍至氏は同日、ツイッターで
「ザハ・ハディド訃報。にわかに信じられない。ご冥福をお祈り致します」
「迫力ある風貌と裏腹にオープンで快活な人柄、品格とオーラを感じる建築家でした」
と偲んだ。
新国立旧計画のコンペで、最終3案まで残ってザハ氏と最後まで争った日建設計の建築家・勝矢武之氏も同日ツイッターで
「学生の頃、あのドローイングに憧れた」
などと、ザハ氏独自のスタイルに賛辞を送った。
その他、建築関係者らしきツイッターユーザーからは「構造設計者として無念の一言。 ようやく技術が彼女に追いついてきた所だったのに」と、惜しむ声が上がっている。