たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学(テレビ朝日系)2016年3月22日放送
「長引く治らない症状 本当の原因をもう一度探ります」
気分が落ち込み、外出するのが億劫で人にも会いたくない。こうした症状の陰には、様々な病気の可能性が隠れている。
最も代表的なのは、うつ病だ。ところがなかには、医師ですら見破るのが難しい病気のケースがある。
昼間の記憶が抜け落ち、幻覚が見え、部屋で大暴れ
番組で紹介されたのは、49歳女性の事例だ。子どもが巣立ったのを契機に仕事に復帰し、明るい性格で職場にもすぐに溶け込んだ。
最初の異変は、のどの痛みだ。週末に家で熱を測ったら微熱がある。「風邪かな」と思い、薬を飲んで休んだらすぐに治った、はずだった。
週明けに元気に出社したが、思わぬ事態になる。仕事上で考えられないようなミスをしたうえ、勤務中の居眠りを注意された。
失態の連続に落ち込んだせいか、帰宅後も食欲がわかない。日に日に落ち込みが激しくなる様子を心配した夫が、妻である女性を自宅近くのメンタルクリニックに連れて行った。医師は「うつ病」と診断し、薬を処方した。
ところが、一向に回復しない。さらに悪化し、頭痛で1日中寝たままという状態で、とうとう仕事を辞めて治療に専念することにした。
ある日、突然気分がよくなった女性は、日中に「引きこもり」から脱して久々に外出、夫婦で公園に散歩に出かけた。ところがその夜、夫がその話をすると、女性は全く覚えていなかった。記憶がスッポリ抜け落ちているようで、思い出せる様子もなかった。
症状はどんどんエスカレートする。ある日、帰宅した夫に「家の中にカラスが入ってきた」と口にした。幻覚が見えているようなのだ。脳のMRI(磁気共鳴画像)検査を受けたが、異常はない。メンタルクリニックを再訪すると、「統合失調症ではないか」として別の薬を処方された。だが今度は、夫に対して「誰だお前は。出ていけ」と暴言を吐き、家の中で暴れるようになってしまった。
最初にうつ病を疑われたが、薬の効果はない。病気の正体は何なのか。
脳には異常なし、ところがお腹を調べたら
女性を危機から救ったのは、岡山大学病院精神科神経科助教・高木学医師だ。心の病に隠れる体の変調を、さまざまな方法から探る「神経診察」を行う。
うつ病には大きく分けて、精神症状のみのものと、精神症状に加えて身体症状をともなうものがあるという。後者の場合、脳梗塞や脳腫瘍(のうしゅよう)、パーキンソン病の可能性がある。
最初に、女性にペン先に光る光を見せ、ペンを動かして眼球の動きをチェックした。光を追えないと脳腫瘍の恐れがある。次に、部屋の中を歩かせた。パーキンソン病の場合、すり足になり歩幅が極端に小さくなるからだ。だが、いずれ異常はなかった。
ところが、ひざの動きを調べているときに女性の口がモゴモゴと動いた。まるで何かを含んでいるように見える。ここで高木医師は、全く別の病気ではないかと考えた。
高木医師「脳波を調べさせてください」
検査をすると、大きく乱れていたのだ。記憶障害や幻覚が見えたのは、脳波の異常が大きく関係していそうだ。そこで再度問診をすると、夫は「風邪のような症状」が続いていると明かした。その場で熱を測ると、38度もある。
高熱と脳波の乱れ。高木医師は「お腹のMRIとCT(コンピューター断層撮影)検査をしましょう」と申し出た。
その結果、女性の右の卵巣が腫瘍で巨大化していた。病名は「卵巣奇形腫による自己免疫性脳炎」。卵巣に腫瘍ができると、通常は免疫細胞が攻撃して対処しようとする。ところが女性の場合、風邪の影響で免疫細胞が「暴走」し、腫瘍ではなく脳を攻撃したとみられる。自己免疫性脳炎は2007年に海外で発見された、新しい病気だ。その後女性は適切な処置を受け、半年後に快復した。
女性に多く見られる手足の異常とは
ほかにも、うつ病と間違えやすい病気がある。特に女性に多く見られ、気づかずに放置しているケースが少なくないようだ。では、そのサインは何か。
司会のビートたけし「気分の落ち込みはあるけれど、それに何かプラスされる」
ゲストの榊原郁恵「どこかの痛み?」
答えは「手足の冷え」だ。スタジオでは一斉に驚きの声が上がった。これは「甲状腺機能低下症」の可能性があるという。甲状腺ホルモンが低下して全身の代謝が落ち、倦怠感はじめ体の機能が下がる症状が出る。
ゲストの高橋英樹「どんな治療をすればよいのですか」
高木医師「薬を飲むことによって、甲状腺機能をコントロールします。機能がよくなったら、『うつ』で長年苦しんでいた方が治っていることがあります」