埼玉県朝霞市の女子中学生(15)が約2年にわたり監禁されていた事件をうけ、公衆電話の設置場所に注目が集まっている。女子中学生は東京都中野区の駅に設置された公衆電話で警察に通報し、即日保護された。
いわば緊急時の連絡手段としてクローズアップされているわけだが、皮肉にもその数は年々減っている。今や駅やデパートといった人が集まる場所にさえ「ない」状態だ。
有名百貨店は公衆電話が消えたところも
電気通信事業法は、電気通信事業者(NTT東日本・西日本)に対し、市街地におおむね500メートル四方で1台、それ以外の地域におおむね1キロ四方で1台、公衆電話を設置するよう定めている。
こう書くと、全国津々浦々にくまなく設置されているように見えるが、その数は減る一方だ。主な原因は携帯電話の普及による需要減。NTT東日本の公式サイトによると、2014年度末時点での全国の公衆電話施設数は18万3655台だ。
04年度末の44万2302台と比べて半分以下、1989年度の82万8977台と比べれば4分の1以下となった。この27年間で、大半の公衆電話が街から姿を消したわけだ。
そうした様子を肌で感じるのか、ツイッターには
「公衆電話減りましたねぇ」
「不便だねえ」
といった声が日々寄せられている。
そして、駅やデパートなど一般的に見て「ありそうな」場所にもない。NTT東の公式サイトで東京都内の設置場所を検索すると、日本橋高島屋や松屋銀座、日本橋三越本店といった東京を代表する百貨店にはなく、あの広大な東京駅構内でさえ1か所しか設置されていない。
都心から離れた場所や地方はさらに深刻で、「終日利用不可」のボックスか、もしくは、そもそも設置されていない場所がたくさんある。駅などの公共施設も例外ではない。法律で決められた500メートル(または1キロメートル)四方に1台しか設置されていない「ギリギリ」の地域も珍しくなくなった。
東日本大震災では人々が公衆電話に長蛇の列
女子中学生は、未成年者誘拐の疑いで逮捕された寺内樺風(かぶ)容疑者(23)の自宅を脱出し、近くにあったJR東中野駅の公衆電話で110番通報した。
これをうけ、埼玉県教育局の関根郁夫教育長も16年3月30日の会見で「災害時も公衆電話が使えることは重要。携帯電話を持っている子が多いので、改めて使い方を周知する必要がある」と語っている。
今から4年前、東日本大震災の際も公衆電話の有用性が注目された。揺れに見舞われた東京都内で、携帯電話や固定電話がほぼつながらない中、人々が公衆電話に長蛇の列を作ったのだ。
公衆電話は緊急時こそ「能力」を発揮する。110番や消防への119番は現金やテレホンカードを使わず無料で通話できるほか、災害時の通信規制下でも優先して電話をかけられる。回線を通して電力が供給されるため、停電の影響も受けにくい。
また、公衆電話ボックスを活用した公衆無線LANサービスも始まっている。Wi-Fiのアクセスポイントをボックス内に設置するもので、東京都千代田区が16年3月から始めた。
今回の事件を機に「不足」状況が周知されつつある公衆電話。「実は使える」という再評価の機運が高まっている。