薬局で薬を買う時に「お薬手帳」を忘れると、医療費が高くなる――。こんな話題が、いまネット上で大きな注目を集め、ツイッターなどでは「余計な事すんなよ」「納得行く説明しろや!」と怒りの声が上がっている。
2016年4月に改定される新しい診療報酬で、薬局を利用する際にお薬手帳を持参すると支払い料金が安くなる場合があるためだが、その差額は最大で「40円」だ。
3割負担の患者で40円の差
薬局で無料配布される「お薬手帳」は、薬の服用履歴やアレルギーの有無など、医療関係者が薬を処方する際に必要な情報を記載する手帳だ。元々は一部の医療機関が行っていたサービスだったが、2000年に厚生労働省が「制度」として導入。同年の診療報酬改定で、手帳に服用履歴を記載する際に料金が発生するようになった。
患者にとっては、万一の服用ミスを防ぐほか、重複投与による無駄な出費を抑えるなどお薬手帳を利用するメリットは大きい。薬を処方する側にとっても、患者の状況を短時間で確認できるため業務の効率化に繋がる。そのため、厚労省や日本薬剤師会は、これまでも積極的な利用を促してきた。
だが、15年度までの診療報酬では、「手帳を利用しない方が、医療費が安くなる」という状態だった。現行の報酬体系では、お薬手帳を利用した場合は管理指導料として410円かかるが、利用しない場合の指導料は340円だった。そのため、ツイッターなどでは「手帳を断れば安くなる」などとして、まるで「節約術」のように手帳の使用を控えることを薦めた投稿が拡散していた。
こうした状況を受け、厚生労働省は16年度から診療報酬を改定。いくつかの条件はあるが、「お薬手帳を利用すると、医療費が安くなる」ように変更した。具体的には、手帳を持参した場合は、持参しなかった際と比べて管理指導料が120円安くなる。これにより、3割負担(70歳未満)の患者であれば、医療費に40円の差が生じることになった。70歳以上の場合は、1割負担なので10円の差となる。