米大統領選の共和党での指名争いでトップを走っている不動産王のドナルド・トランプ氏(69)が仮に当選した場合、東アジアの安全保障環境は大変動を迫られそうだ。2016年3月26日(米東部時間)にニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に掲載されたトランプ氏のインタビューで、在日米軍の撤退、日米安保条約の見直し、そして日本と韓国の核保有を容認を示唆したからだ。
かつての「世界の警察官」として国際社会に対してコストを割く余裕がなくなったことを強調する内容で、米国の一部保守派の主張を反映していると言えるが、安倍首相が最重視し、安保法制の前提である日米安保条約の見直しが急浮上した形だ。
「数十億ドルという巨額の費用を失う余裕は、もうない」
インタビューでは、トランプ氏が外交問題に1時間40分にわたって持論を展開。日米間の貿易不均衡を「信じられない」「非常にアンフェアな状況」などと主張するなかで、米軍の駐留経費にも言及した。インタビューを担当した記者は、日本が米軍に対して世界で最も多額の経済的負担をしていることを指摘したが、トランプ氏は
「それはそうだが、実際にかかっているコストよりもはるかに少ない」
と反論。さらにトランプ氏は、日本や韓国が駐留経費への貢献を大幅に増やさなかった場合、撤退する可能性について聞かれ、
「喜んでではないが、やぶさかではない」
「このこと(米軍駐留)で数十億ドルという巨額の費用を失う余裕は、もうない」
と応じた。
話題は核武装にも及んだ。北朝鮮への抑止力を議論する中で、
「彼ら(日本が)自分の核兵器を持つ必要があり、単に我々(米国)に依存することはできないかもしれない、ということか」
という記者の質問に、トランプ氏は
「本当にそうだと思う」
と答えた。
同盟国と結んでいる多くの基本条約についても「再交渉」する必要性を主張。そのひとつとして日米安保条約を挙げた。トランプ氏は、日米安保条約を「片務的」「フェアな取引ではない」だと主張した。