西室泰三・日本郵政社長退任に見え隠れする「東芝問題」 「株式会社」後も政治に翻弄され続ける人事

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

「2017年6月まで務める」と語っていたとされる西室氏

   実は、今回の人事に至る過程では、西室氏を巡って、2015年春から火が付いた東芝の不適切会計問題で歴代3社長が責任を取って東芝を去るに及んで、東芝トップを経験した西室氏の責任を問う声が政界にもくすぶり、一部ネットメディアなどでは、早期退陣の観測気球的な記事も出ていた。

   一方、2015年11月に日本郵政本体とゆうちょ銀、かんぽ生命の3社同時上場を果たした西室氏の功績を評価する声もあり、西室氏自身、この2月の入院直前まで、「2017年6月まで務める」と周辺に語っていたとされる。

   後任人事について、官邸が民間人の起用を軸に昨年から候補者選びを進めていたとされるが、西室氏の体調から時期が早まり、民間人の人選が進まぬままに、時間切れになり、内部昇格の線が濃厚になった。そして、天下り批判への配慮から、消去法的に長門氏に収れんした、というのが今回の人事だったようだ。

   長門氏は日本興業銀行(現みずほ銀行)出身。合併後のみずほ銀行で常務執行役員を務めた後、富士重工業副社長、シティバンク銀行会長を歴任した。国際派として知られる。3月16日の長門次期社長発表の際、鈴木副社長は長門氏について、日本郵政グループの収益の源泉となっている金融事業に精通していることや、オーストラリアの物流大手「トール」買収などで国際展開が進んでいることから、海外ビジネスにも詳しいなどの経歴を評価したと説明した。

   ただ、日本郵政は、傘下のゆうちょ銀、かんぽ生命の民営化を早期に実現して事業の自由度を高めたいで、これら稼ぎ頭の金融事業が自立すれば、郵便事業だけが中核に残って収益体質が弱まるという矛盾を抱える。金融事業自体も、日銀が導入したマイナス金利の影響もあって先行きは厳しい。

   そもそも、日本郵政のトップは、政治との関係、全国郵便局長会や労働組合などとの調整なども重要になるだけに、長門体制は、難しいかじ取りを求められることになる。

1 2
姉妹サイト