実業団陸上部のヘッドコーチが「実感」 スポーツ界が今、アミノ酸に注目するワケ

   スポーツの世界で「アミノ酸」の存在感が高まっている。今や水分補給と同じくらい重要なものとして研究が進んでおり、トレーニングなどに取り入れている人も増えている。

   実業団の陸上部ヘッドコーチとして、就任後わずか1年強でニューイヤー駅伝出場へと導いた田中正直さん(39)も、アミノ酸の力を実感している一人だ。田中さんに、「アミノ酸とスポーツ界」の現況を聞いた。

  • エアラン東京ランニングクラブ代表と、実業団サンベルクス陸上部ヘッドコーチを兼ねる田中正直さん
    エアラン東京ランニングクラブ代表と、実業団サンベルクス陸上部ヘッドコーチを兼ねる田中正直さん
  • エアラン東京ランニングクラブ代表と、実業団サンベルクス陸上部ヘッドコーチを兼ねる田中正直さん

筋肉の素となるが、体内では作り出せない

   アミノ酸とはタンパク質を構成する物質で、筋肉などの素となる。運動によって徐々に枯渇していくが、20種類あるうちの「必須アミノ酸(BCAAを含む)」と呼ばれるアミノ酸は体内で作り出せない。そのため、意識的に補給しなければコンディションに支障をきたしかねない。「スポーツ界で特にアミノ酸が注目を集めるようになったのは、ここ10年ほど。科学的な解析がどんどん進んでいるのと、商品改良が重ねられ美味しくなり飲みやすくなっている」と田中さんは話す。「マラソンランナー等のアスリートの間では、水とともにアミノ酸が欠かせない存在になった。」という。


   市民ランナーに走る楽しさを伝えようと、田中さんらが立ち上げた「エアラン東京ランニングクラブ(RC)」でも、指導の一環でアミノ酸の補給を取り入れている。こだわりの裏には、「ポンコツ選手だった」と自称するほどの現役時代の苦労がある。

   大学卒業後、実業団マラソンの名門・日清食品に入社したが、相次ぐケガに悩まされた。そのたびに調子を落としてタイムが伸びず、「もっと走りたい」と思いながら24歳の若さで引退を決意した。その後、「そんな自分だからこそ伝えられることがある」と指導者を志し、独自の指導方法を構築し、市民ランナーに実践した。2014年にヘッドコーチに就任した実業団サンベルクス陸上部は、同部初となるニューイヤー駅伝(2016年)出場を勝ち取った。

   「スポーツをする人にとってまず大事なのは、ケガをしないこと、疲労をためないこと。そうすれば継続的にハードなトレーニングができて、記録も伸びる」と田中さんは考えている。そこで注目したのが栄養面、特に筋肉などの素となるアミノ酸だった。存在を知ったのは18歳の時、高校の監督に勧められたからだと言うが、本格的に意識し出したのは現役引退後。「選手時代ほど生活の全面に気を配らなくなったため、疲労を感じやすくなった」という。それから、改めてアミノ酸の知識を深めていった。

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