経済産業省が燃料電池車(FCV)の普及に向け、水素ステーションの拡充に本腰を入れる。トヨタ自動車に続き、ホンダが新型FCV「クラリティ」を発売したが、肝心の水素ステーションは設置コストがネックとなり、普及が進んでいない。
一方で、政府と自動車業界はプラグインハイブリッドカー(PHEV)や電気自動車(EV)の普及に向け、充電器の設置も進めており、EVとFCVの覇権争いの様相だ。当面は水素ステーションと充電器の整備が並行して進むことになるが、FCVが巻き返すのはなかなか大変なようだ。
水素ステーションは5年後目標が320台
ホンダのクラリティは企業や自治体向けなどのリース販売からスタート。2017年秋ごろには個人向けにも販売する予定だ。1回の水素充填で走る距離は、トヨタの「ミライ」と比べ約100キロ長い約750キロ。車両価格は766万円で、政府や自治体の補助金を使えば400万円台で買えるユーザーもあるという。
トヨタに続き、ホンダが満を持してFCVを発売したことで、本格的な普及が期待されるが、最大のネックは車両価格ではなく、全国で約80か所にとどまる水素ステーションの少なさにあることは言うまでもない。経済産業省は2015年度に4大都市圏を中心に水素ステーションを100か所に倍増させる計画だったが、目標に届かなかった。
そこで打ち出したのが、2025年度までに水素ステーションを現行の4倍となる320か所に増やし、FCVを2025年までに国内で20万台、2030年までに80万台に増やす計画だ。
水素ステーションの設置には約4億円かかり、ガソリンスタンドの数千万円に比べて非常に高い。経産省は補助金や規制緩和などでコスト低減を図り、水素ステーションの設置コストを欧米並みの2億円程度に引き下げる目標を掲げた。FCVの価格も2025年までに200万円台まで引き下げるというが、いずれも実現の見通しは立っていない。