一部自治体の「待機児童ゼロ」は誇大表示?
こうした政府の曖昧さが、世の幼い子を持つ親はもちろん、自治体も混乱させている。例えば、川崎市は2015年4月の「待機児童ゼロ」を達成したとされるが、認可保育所に希望しても入れなかった児童、つまり「隠れ待機児童」が2231人いた。2013年に「待機児童ゼロ」で脚光を浴びた横浜市の場合も、専任の要員を配置してきめ細かく親の相談に乗り、認可保育所に入れなくても自治体認定の保育所を親と一緒に探すなどの努力は評価されるものの、「『待機児童ゼロ』は誇大表示」(保育関係者)との声がある。逆に、待機児童数日本一の世田谷区は、母親が育児休暇を延長した場合は待機児童扱いとなるなど、実際の待機児童数と公表児童数との差が相対的に少ない――といった具合だ。こんな、メートル法と尺貫法の数字を比べるような不毛な数字合わせの横行が、まじめな政策論議を妨げている。
とはいえ、このブログをきっかけに、待機児童が一気に政治問題化し、参院選の争点の一つに急浮上したのは間違いない。特に政府・与党は、安倍晋三首相が民主党の山尾議員に最初にブログのことを質された際に「実際に起こっているのか確認しようがない。これ以上、議論しようがない」と答えて世論の不興を買ったこともあって、神経をとがらせている。
保育所不足で何と言っても問題なのは、特に都市部での保育士不足だ。用地確保の困難さやコストの高さもさることながら、平均給与が月約21万9000円と全産業の平均よりも約11万円も低いという保育士の処遇が最大の問題だ。