小児医療や保健現場から国の政策を論じる日本小児医療政策研究会が2016年3月19日、東京で開かれた。
代表幹事の衛藤義勝・東京慈恵医科大学教授らが07年から始めたユニークな研究会は今年が12回目。
乳児のB型肝炎ワクチン定期接種の重要性を強調
シンポジウムでは医療現場からの真剣な提言が続出した。深沢満・ふかざわ小児科院長(福岡市)は昨年、ビタミンK欠乏性の頭蓋内出血を起こした胆道閉鎖症の2か月児に遭遇した。ビタミンKシロップを3回服用済みだったが、胆道閉鎖症児には万全でなく、日本では年間25人程度が頭蓋内出血を起こしていると予測できた。諸外国の例から深沢さんは、頭蓋内出血を予防するには、現在のシロップ3回服用より、生後3か月までの毎週服用(13回)が必要と訴えた。山口県、福岡県はすでに毎週服用を始めているという。これに関連し、仁志田博司・東京女子医大名誉教授(小児科)は、米国などで実施されているビタミンK筋肉注射がシロップより簡便で確実、とコメントした。
須磨崎亮・筑波大学教授(小児科)は今年10月から始まる乳児のB型肝炎ワクチン定期接種の重要性を強調した。乳児期のワクチンの多さから諸外国のように6種混合ワクチンの開発を急ぐこと、B型肝炎は日常生活や海外での感染の可能性が高いため、定期接種から外れる幼児や青年への任意接種も推奨した。
米倉竹夫・近畿大学奈良病院教授(小児外科)は東日本大震災を踏まえ、小児災害医療対策の重要性を訴えた。大災害時には被災者の3割が小児とされるのに、現在の日本のDNAT(災害派遣医療チーム)には小児用の携行機材はなく、拠点病院にも小児用機材がない。こうした現状を変えるため、医療者が小児に代わって要望・発言しなければならないと指摘した。
また、松平隆光・日本小児科医会会長は特別講演で、胎児期から成人期までの子どもの育児・健康をカバーする「生育基本法」制定の重要性を強調、フィンランドに800か所もある育児支援拠点「ネウボラ」を紹介した。
(医療ジャーナリスト・田辺功)