賭博など不祥事にまみれた中でプロ野球が2016年3月25日に開幕した。平然とスタートすることに対してファンはどんな思いなのだろうか。
野球賭博、円陣ご祝儀、ノック罰金、高校野球の賭け、賭けマージャン、闇スロット...。よくもこれだけそろったものだ、とあきれる。
「いちいち処分していたら、選手がいなくなってしまう」
「多くの選手が絡んでいることが分かった。いちいち処分していたら、選手がいなくなってしまう。だからほっかむりして、開幕しちゃえ、ということ」
評論家の声である。
3月23日に、12球団が共同声明を出した。
「巨人の野球賭博問題を重く受け止め、有害行為を再び起こさないよう、球界の浄化に全力で取り組み...」
「選手相互間の金銭のやりとりに関しても、12球団が結束して一層の徹底を図ることと...」
浄化、結束。ファンにこれを約束したわけである。
ところが翌日、オリックスでもやっていました、と公表した。開幕前に幕引きを図ったことはだれもが分かっているのだが、それでもこの体たらくなのだから、共同声明が空しい。
開幕日、テレビもラジオも試合を中継した。
注目の巨人-ヤクルト(東京ドーム)は日本テレビが中継。江川卓が解説し、原辰徳と松井秀喜がゲストで出演。巨人ファンからいえば「豪華メンバー」である。この巨人戦はラジオのNHK、ニッポン放送、ラジオ日本も中継した。他のカードを中継した局もあったが、「巨人、強し」の感がある。さすが球界の盟主、というべきか。
今後のプロ野球の存在価値はファンが決めることになる。
「黒い霧事件」のときとは状況が大きく違う
かつてプロ野球は、八百長試合が社会的事件となった「黒い霧事件」を克服している。その成功体験が球界にあるのかもしれない。ただし、振り返ってみると、今回とは大きく違う状況があった。
前回の騒動のときは、巨人V9時代の真っ最中で、巨人には長嶋茂雄、王貞治という超スーパースターが打ちまくっていた。その活躍が暗い雰囲気を吹き飛ばした。ちょうど大リーグでベーブ・ルースがワールドシリーズで八百長をしたブラックソックス事件を、特大ホームランで救ったときと似ている。
さて今回だ。何か吹き飛ばすものがあるのか、と思っている。長嶋、王、ルースは毎試合出場する打者で、だから効果満点だったのだが、現在のプロ野球にそんな大物がいるのか。
同じく八百長事件から見事に復活した大相撲は、一場所休んで反省の形を示し、横綱を筆頭に力士たちがファンとの接触を積極的に行った。それがテレビをはじめとするメディアに紹介された。そして今、連日の大入りである。
つまり「けじめ」である。
開幕後のプロ野球に新たなスキャンダルが発覚しなければ、と思うばかりである。今シーズンは、優勝争いとは別に、びくびくしながらの「綱渡りのペナントレース」といえる。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)