クリントンは、当選すれば賛成に舵を切る?
しかし、米国の大統領選は今まさに「TPP反対」一色の様相。TPPの先行きが見えなくなれば、日本にとっての影響は深刻だ。安倍政権はTPPを成長戦略の重要な柱と位置づけ、「TPPはGDPを実質で約14兆円押し上げる」との試算を示してきた。そんな貴重な柱を失うことになる。しかも交渉合意の立役者とも言われ、交渉内容を熟知している甘利明前TPP担当相が1月末、金銭授受問題で辞任した。年明け以降の世界的な株安と円高で、日本の経済も不透明感を増す中、「アベノミクスには黄信号がともってきた」(エコノミスト)との声も目立ちつつある。
ただ、米国が本当にTPPを承認しないかといえば、そんなことはないとの指摘も少なくない。特にクリントン氏については「当選すれば、TPP承認の方向にかじを切る可能性が高い」(エコノミスト)との見方が一般的。クリントン氏は元々、国務長官時代にTPP交渉に加わっており、「TPP不支持は選挙対策を踏まえた政治的発言」(同)と見られるためだ。
一方、筋金入りのTPP反対論者とされるトランプ氏が当選した場合はどうなるか。「議会が全面的にトランプ氏に賛同するわけではない」との声もある。だが、トランプ氏の現在の躍進が予想外だっただけに、先行きは見通せないというのが実情だ。日本政府もトランプ氏の動向に神経をとがらせている。