高市早苗総務相による、いわゆる「電波停止」発言をめぐり、TBSの報道番組「NEWS23」でアンカーを務める毎日新聞社特別編集委員の岸井成格(しげただ)氏(71)らジャーナリスト5人が2016年3月24日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。
岸井氏は、発言を「見過ごすことはできない」として改めて撤回を求めながら、質問に答える形で記者クラブ制度にも言及。「弊害が目立つようになってきた」として「やっぱり廃止した方がいい」と述べた。
鳥越氏も「閉鎖的な記者クラブは廃止すべき、という風にはっきりした方がいい」
記者クラブでは、加盟社以外の記者会見参加や質問が制限されることも多く、海外メディアからは取材の障壁だとみなされることも多い。こういった点について認識を問われ、岸井氏は
「記者クラブ制度にある意味では非常に助けられて取材をしてきた人間としては言いにくいが、ここに来てデメリット、弊害が目立つようになってきたというのは間違いない。クラブ制度をどうするかということを現場で本当に話し合って、結論(として)は、やっぱり廃止した方がいい。自由がいい」
と述べた。現場で話し合った末に記者クラブ制度を廃止し、官公庁の記者会見は「フルオープン」にするのが望ましいとの考え方を示した形だ。毎日新聞出身の鳥越俊太郎氏(76)も、
「(取材希望者が少ない警察ではなく)政治・経済ということになると、これは色々な人が興味を持っている。公開した方がいい。つまり、閉鎖的な記者クラブは廃止すべき、という風にはっきりした方がいい」
と大筋で同意した。共同通信出身の青木理氏(50)は
「公共機関の中にああいう形でクラブの存在、ある種のメディアの拠点があるのは決して悪いことではないような気がする」
と、行政の透明性を確保するための意義を一定程度評価しながらも、抜本的な改革を求めた。
「弊害が多くなってきているのは間違いない。最近週刊誌が元気で新聞からは特ダネが全然出ないじゃないか、というのは記者クラブ制度の弊害のひとつなのではないかと経験上思う」
「記者クラブ制度を抜本的に改革しないと、マスコミ不信がもっと強まってしまう」
「私に対して直接、間接の政権側からの圧力は一切ない」が...
岸井氏は15年9月、採決が目前に迫っていた安全保障関連法案について
「メディアとしても廃案に向けて声をずっとあげ続けるべきだ」
と発言。この発言が政治的公平を求めている放送法に違反しているとして、一部の作家や評論家でつくる「放送法遵守を求める視聴者の会」が15年11月、発言を非難する意見広告を産経新聞と読売新聞に出したという経緯がある。
岸井氏は、3月25日の放送を最後にNEWS23のアンカーを降板し、4月1日付でTBS専属の「スペシャルコメンテーター」に就任する。そのため、発言への批判と番組降板がリンクしているとの見方も根強い。岸井氏はこの点について、
「私に対して直接、間接の政権側からの圧力は一切ない。それを感じさせるものも私の周辺ではない。おそらく相手も、それをやれば、私が番組でそれを明らかにして批判することは、当然察知しているだろうと思う」
としながらも、「タイミングが非常に悪かった」と説明した。番組改編に向けた人事が動き出したところに意見広告が出るなど様々な動きがあったため、国民には「萎縮している」という印象を与えた、という見方だ。
「私に言わせれば信じられないような気味の悪い意見広告」
「いろんなものが集まって動き出したところに、ご存じのとおり、私を、(ニュース)23を批判する、とんでもない、私に言わせれば信じられないような気味の悪い意見広告が載った。そして、それと時期を同じくして(報道ステーションの)古舘(伊知郎)さんや(クローズアップ現代の)国谷(裕子)さんの交代が出てきたもんだから、そういう権力に民放側、NHKが萎縮しているのではないかという見方が出てきている」
合わせて、
「今、政権側のやり方は非常に巧妙、悪く言うと非常に狡猾(こうかつ)。正々堂々、真っ正面からやってこない」
とも指摘した。
意見広告を出した「視聴者の会」は、岸井氏らに公開討論を求めている。仮に開催されたとしても議論が平行線に終わる可能性があるが、この点を会見後に岸井氏に指摘すると、岸井氏は
「平行線どころか...、あんなのばかばかしくてやるわけない。相手にするわけないよ」
と話した。