「保育園落ちた日本死ね」と書かれた匿名のブログが話題となり、待機児童問題が国会でも議論になっている。これを国会で攻める方は簡単だ。このような実例があると言って、政府を追及すれば良い。地方の実情のわからない政府は防戦になる。
もっとも、待機児童問題は地域性が大きい問題だ。待機児童の大半は東京に集まっている。この問題は、全国一律の話しかできない国ではなく、地方自治体のほうが問題解決に適している。しかも、カネを投入するにしても、その方法はよく考えてやらなければいけない。(2016年3月27日に結党する)民進党関係者が言うように、政府で給与を補填するというのは、全国一律になると、効果が発揮できなくなる。
待機児童問題は地方議会で議論を
待機児童はまさにその分野であり、はっきり地方に任せておけば、安倍政権として国の施策で指摘されることはなかったはずだ。あえていえば、待機児童問題は地方議会で議論してほしいといえばいい。
地方自治体が、待機児童問題を考える上で、是非とも参考とすべきは、「シェアード・エコノミー(共有型経済)」である。例えば、配車サービスの「Uber(ウーバー)」や「Lyft(リフト)」が代表例である。現時点では、マイカーの有効活用まではできないが、将来的にはマイカーで配車サービスが可能であろう。これを待機児童問題に応用すればいい。かつて保育士資格を取った人や保育サポーター・保育ママなどを登録させ、彼ら彼女らの自宅などを活用したマッチングビジネスを地方自治体が支援すればいい。
現状の仕組みでは、保育所に入所できるか否かの二者択一しかないのに対して、この新たな仕組みをつくれば、対応可能な保育士・保育サポーター・保育ママとスペースの活用(Uberの応用)による柔軟なサービス展開が可能になる。
シェアード・エコノミーを導入すれば、現状の保育士の低い給与の改善にもつながる可能性がある。
保育士の質向上と待遇アップ
保育士給与が低いのは事実であるが、保育士の質に問題があると筆者はみている。保育士試験には、養成校(短大、専門学校など)コースと保育士試験コースがあるが、後者の試験が難しくて合格率20%程度しかない。これは、前者の既得権を守っているとしかみえない。この種の話はどこの役所でもある。例えば、税理士でも税務署OBは全員、簡単に資格がとれるが、そうでない試験組の合格率は20%程度だ。
これでは、保育士全般の質の向上は難しい。そして、質が悪いから待遇も悪くなる悪循環に陥っている。
そこで、「シェアード・エコノミー」での必須要件である顧客の評価フィードバックを活用すれば、質の高い保育士を見つけられ、その待遇をアップすることができる。
「シェアード・エコノミー」を活用した待機児童対策について、安全性も確保する必要がある。自治体で一定のルールで保育士・保育サポーター・保育ママを監督するのは必須である。具体的には研修は当然として、複数で組ませること、カメラによる監視を行うことだ。今の技術ならカメラ監視(保護者からも監視が可能)もきわめて安価でできる。
地方自治体であれば、地域に応じていろいろな工夫ができる。国は、そのための財政・規制緩和支援だけをすればいい。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「戦後経済史は嘘ばかり」 (PHP新書)、「数字・データ・統計的に正しい日本の針路」(講談社+α新書) など。