「奨学金延滞者の割合を学校別に公表する」――。日本学生支援機構(JASSO)が2016年夏に発表する調査結果が、ネット上で賛否を呼んでいる。
ツイッターやネット掲示板では、「どんどん公表しろ」と賛同の声が相次ぐ一方で、「大学の努力で何とかなるような問題か」との反対意見も目立つ。さらに、「奨学金の延滞者率が、大学の質を測る指標になるのではないか」との指摘も登場し、ネットユーザーから大きな話題を集めている。
37.6%の滞納者が「返還の義務を知らない」
JASSOによると、奨学金を返還する必要がある374万1000人のうち、3か月以上滞納している「延滞者」は約17万3000人(4.6%)。14年度末までの全体の滞納額は計898億円にも及ぶ。
こうした状況を背景に、JASSOが「奨学金返還の重要性」を改めて周知する目的で始めるのが、「延滞者」の割合を学校別に公表する施策だ。大学や専修学校など、奨学金利用実績のある全ての学校機関を対象に、要返還者と延滞者の数を16年夏を目途にホームページ上で公開する予定という。
実は、前出のJASSO調査によると、奨学金延滞者の37.6%が申し込み手続きを終えた後も返還の義務を知らなかった。さらに、延滞督促を受けてから返還義務があることを知ったという人も9.8%いた。返還期限を猶予する救済措置についても、延滞者の35.7%が「知らない」と答えていた。
JASSOの広報担当者は16年3月23日のJ-CASTニュースの取材に対し、「返還の義務や救済制度の周知は、学校と連携して指導に努めています」と答える。その上で、今回の施策の趣旨については、
「奨学金返還においては、在学中の指導が重要であると考えており、これまでもJASSOでは学校側との連携協力を進めていました。奨学金の返還状況を学校別に公表することで、各学校における奨学金指導の成果を明らかにする目的があります」
と説明した。また、奨学金制度は公的資金を運用している事業のため、「納税者である国民の皆様への『説明責任』を果たす趣旨もある」とも補足した。