キヤノンの資金余力に懸念も
これについて、買収に手を挙げて敗れた富士フイルムが「極めてトリッキーなやり方」と批判し、室町正志東芝社長宛に質問状を送る騒ぎに発展しているように、問題ありとする指摘が少なくない。
キヤノンが、問題含みの手法にも目をつぶってまで買収を急いだことに、あせりを見る向きもある。2020年の業績目標として、売上高5兆円以上、営業利益率15%以上を掲げているが、足元の業績を見ると、2016年12月期の連結営業利益は前期の3552億円から1%増の3600億円と、2期ぶりのプラスを見込むが、それでもピークだった2007年12月期の半分以下にとどまる。
もちろん、2015年末で自己資本比率は67%、現預金は6336億円、借入金はわずか15億円という強固な財務体質は健在だ。
それでも、キヤノンは2015年にネットワークカメラ世界大手のアクシスコミュニケーションズの子会社化に約3000億円を投じており、同業他社が「あまりにも高額だ」と驚く今回の東芝メディカルを合わせると、買収金額は年間売上高の4分の1を超える。このため、市場では「成長分野など機動的に資金を回す余力が失われていくのではないか」(外資系証券)との懸念も出始めた。
買収効果をいかに早期に発揮するか、キヤノンの経営のスピードと実行力が問われている。