覚せい剤取締法違反(所持、使用)の疑いで逮捕・保釈後、病院へ搬送された元プロ野球選手、清原和博被告が病院前に張り込む報道陣に差し入れた「焼肉弁当」が波紋を広げている。
ほとんどの記者らが手を付けずに放置した一方、記者による「食レポ」を自社媒体に掲載する「強者」も現れた。ネット上ではこうした動きに「倫理観があるとは思えない」「買収されてる」と批判の声も上がっている。
「ひどい記事を書くな、という働きかけとも捉えられかねない」
千葉県松戸市内の総合病院に入院後、一度も公の場に姿を見せていない清原被告。何としてでもその顔をとらえたい、と病院前に張り込む報道陣との「根競べ」が始まって、2016年3月21日で5日目を迎えた。
先に動きを起こしたのは清原被告だった。20日18時頃、報道陣に「焼肉弁当」という思わぬ差し入れをよこしたのだ。
各報道によると、黒塗りのワンボックスカーが突如目の前に現れ、乗っていた男性2人が30人分の弁当を差し入れてきた。2人は「東京都内にある清原被告行きつけの焼肉店の者」を名乗り、清原被告側から報道陣に届けるように指示されて持ってきた旨を明かすと、弁当を置いてそそくさと去って行った。なお、弁当のケースや割り箸からは店名を特定できなかったらしい。
この差し入れに報道陣は困惑。スポーツ報知によると、現場で弁当に手をつける記者やカメラマンは誰もおらず、一部は弁当の返却を病院の受付に依頼し、病院側が預かりを拒否する事態にまで発展していた。東京スポーツも「本紙の記者も食べなかった」と書いている。
21日放送の情報番組「とくダネ!」でも田中良幸レポーターが「ひどい記事を書かないで欲しい、放送をしないで欲しいという働きかけとも捉えられかねない」と清原被告の行為を批判し、司会の小倉智昭さんも「(現場の報道陣は)食べるにはいかないですよね」とこれに賛同した。
スポニチが果敢に「食レポ」挑戦
そんな中、スポーツニッポン(スポニチ)は弁当の中身を詳しく紹介するだけでなく、「食レポ」までやってのけた。21日付けスポニチ電子版記事「肉汁広がり10分完食 清原被告差し入れ焼き肉弁当食べた」によると、弁当の中身は、白米の上に並んだ焼き肉6切れと付け合わせのナムル、キムチ。タレで味付けされた肉は脂っこくないものの柔らかく、口に入れると肉汁が広がったという。
食べた記者いわく「高級な肉を使っていると感じた」。ごま油の効いたほうれん草とモヤシのナムル、キムチが口直しとしての役割を果たし、約10分で完食したようだ。この「食レポ」は16年3月21日付けのスポニチ本紙の一面も飾っている。
21日放送の情報番組「モーニングショー」(テレビ朝日系)によると、同番組が焼肉弁当の処理をマスコミ各社に尋ねたところ「とりあえず会社に持ち帰る」「上司に相談する」との回答が多かった。スポニチ以外で「食レポ」に挑んだマスコミは確認できないが、こっそり食べた記者が他にいたのかもしれない。
差し入れの弁当を清原被告ならではのハプニングとして、貪欲に「記事ネタ」としていくスポニチの姿勢には賛否両論分かれており、ネット上で
「弁当ぐらい食えばいいじゃん」
「食べ物を無駄にせず記事にする記者魂」
といった高評価もある反面
「倫理観があるとは思えない」
「買収されてら」
との批判も少なくない。
ちなみに、報道陣に差し入れを配った有名人は過去にもいる。15年9月26日には、2日前に妻・川島なお美さんを亡くしたパティシエの鎧塚俊彦さんが自宅前に張り込む報道陣に関係者を通じて食事を差し入れた。俳優のペ・ヨンジュンさんも11年9月5日に帰国する直前、羽田空港で報道陣にアイスティーを振る舞っている。また、小渕恵三外相(当時)は1998年7月18日、米ニューヨーク・タイムズ紙に「冷めたピザのように生気に欠ける」と評されたことをうけ、自宅前で張り込む報道陣に宅配ピザを差し入れた。しかし、いずれも刑事被告人ではない。