再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に基づくすべての利用者の電気料金への上乗せ額が、2016年度は標準的な家庭(1か月の電気使用量が300キロワット時)で「月額675円」になる。
15年度の月額474円から42%増え、FITがはじまった12年度(66円)と比べると、じつに10倍以上も増えたことになる。
値上げの理由は、太陽光発電などの導入拡大
FITは、太陽光をはじめ、風力や水力、地熱、バイオマスなどで発電した電気を、政府が決定する固定価格で、電力会社が一定期間買い取ることを義務付けていて、その買い取り費用は電力会社が企業や家庭の毎月の電気料金に上乗せして回収している。
つまり、再生可能エネルギーの導入が進むほど、電気を使う消費者の負担が増える仕組みになっているわけだ。
経済産業省は2016年3月18日、FITに基づく電気料金への上乗せ額(賦課金)が、標準的な家庭で2015年度の月額474円から、16年度は「月額675円」に値上げすると発表した。年額にすると8100円にものぼり、16年5月の検針分の電気料金から17年4月分まで適用される。
賦課金の単価は、1キロワット時あたり2.25円。再生エネルギーの買い取り費用や販売電力量などをベースに算出されるが、2016年度の買い取り費用は前年度から4630億円増えて、2兆3000億円を想定している。
買い取り費用が増える要因について、経産省は16年度から新たに再生エネルギー関連で運転を開始する設備が増えることや住宅用太陽光発電の稼働率が向上することをあげている。
じつは、新たに認定される太陽光発電事業者からの買い取り価格は2016年度も4年連続で引き下げられる。また、17年度以降はコストの安い事業者に優先して参入してもらう入札制度を導入することで、経産省はさらなる価格低下を促す考えだ。
さらに、最近の原油価格の下落などの要因から燃料調節費が低下し、販売電力量も15年度の8366億キロワット時から16年度は8025億キロワットと341億キロワットの減少を見込んでいる。
それでも、再生可能エネルギーの買い取り費用は増えるという計算なのだ。
「電力会社が自費で買い取れ」
そもそも、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候に左右されやすく、火力発電など従来のエネルギーに比べると割高なので、消費者が支払う電気料金も高くなるのは避けられない。
とはいえ、電力会社が再生エネルギーを買い取るコストとして、電力料金に「月額675円」も上乗せされることには、「納得できない」という声は少なくない。
インターネットには、
「なして国民負担なん? ふざけんなよ。ソーラーも風力も全部ぶっ壊せよ」
「なんでよ! 電力会社が自費で買い取れや!!!」
「再生可能エネルギー栄えて国滅ぶ」
「再生エネ負担金じゃなくて、廃炉負担金なんじゃね?」
「再生エネルギー、別に使ってないですし使いたくもないです」
「こっそり増税 年8100円w しかも年々増えていくwww」
といった声があふれている。
再生エネルギーへの不満は、太陽光発電事業者がFITによる「割高」な買い取り価格を目当てに増えすぎたことにも向いている。経産省が2015年3月までに電力買い取りの対象として認めたのは、発電能力で8768万キロワット分だったが、このうち太陽光発電が約8300万キロワットを占めた。たとえば地域によっては必要以上の電気が流れ込んで大規模な停電が発生する危険性があり、2014年には九州電力などが買い取りを一時停止するという事態が起きた。
さらには事業の認定を受けながら、利益を優先して、わざと発電開始の時期を遅らせていた事業者がいたことも問題になった。
4月からの一般家庭向けの電力自由化では、再生エネルギーが活かされるのかどうかもわかりにくい。たとえば、地方の自治体が新電力を設立。太陽光発電による「地産地消」をうたって電力小売りに乗り出す動きが広がっていることや、ソフトバンクグループの電力小売子会社、SBパワーが4月下旬から家庭向けに小売りする電力のうち、全体の約6割を太陽光発電など再生可能エネルギーでつくった電気にすることを発表しているが、総じて「安さ」ばかりが喧伝され、再生エネルギーの利用割合などは置き去りにされている。
インターネットには、
「もう勘弁してぇな。使っている人や使いたい人から集めればいいやん」
といった、利用者負担を訴える声も少なくない。