やれ「野菜を多く食べろ」「甘い物はダメ」「運動をしろ」と、キビシー注文が多い中、毎日水をちょっと多く飲むだけで、ダイエット効果があがるといううれしい研究がまとまった。
米イリノイ大学のルオペン・アン教授が、米食品栄養学誌「JHND」(電子版)2016年2月16日号に発表した。これまでも「水を飲むのがいい」といわれていたが、大規模な医学的な調査から立証したのは初めてだという。
体の代謝が活発化してデトックス効果も
多くのダイエット関連サイトを見ると、水をたくさん飲むとダイエット効果があがるといわれるのは、こういう理由からだ。
(1)代謝が上がる:血液の水分が増えてサラサラになり、血流がよくなる。細胞組織のすみずみにまで血液がいきわたり、エネルギー消費量が増える。
(2)体温が上がる:代謝が上がると体温があがり、脂肪をどんどん燃焼する。体温が1度上がると、燃焼効率が12%上がるといわれる。
(3)便通がよくなる:腸内に水分が増えると硬い便がやわらかくなり、便通がよくなる。
(4)体内のデトックスができる:便通がよくなり、また尿の量も増えるので、老廃物が体外に排出される。また、体温の上昇で汗をかきやすくなり、汗からも老廃物が出される。
(5)リンパ液の流れがよくなる:リンパ液は筋肉と血液の動きが活発になると流れがよくなる。血液がサラサラになるので、リンパ液の流れもよくなり、老廃物を運ぶ量が増える、などだ。
さて、アン教授らの論文によると、研究チームは米国民健康栄養調査にデータが残っている約1万8300人の協力を得た。協力者に3~10日の間隔を置いて2回、1日の飲食物すべてを記録してもらった。そして1日の食事の総エネルギー量、塩分・糖分・脂肪の摂取量、コレステロール値、そして水分の摂取量を計算した。紅茶やコーヒー、加糖飲料類は、水道水やミネラル水のような「純粋な水」に含まず、「総水分量」の中に入れた。また、食べ物に含まれる水分もすべて「総水分量」として計算した。
食べる量が減って加糖飲料も飲みたくなくなる
分析の結果、参加者は平均して1日にコップ4.2杯の「純粋な水」を飲んでいた。これは1日の総水分量のわずか約30%だった。総エネルギー摂取量は平均で2157キロカロリー。うち糖分の多い飲料から125キロカロリー、デザートやスナックなど健康によくない食品から432キロカロリー摂(と)っていた。
こうしたデータから、1日に摂る「純粋な水」(水道水とミネラル水)の量を増やし、その分ほかの水分を減らして計算し直すと、「純粋な水」の量を総水分量のわずか1%増やしただけで、総エネルギー摂取量、脂肪・糖分・塩分摂取量、コレステロール値が全部低下することがわかった。水を1%分多く飲むだけで、まず食事の量が少なくなり、総カロリー値が8.6キロカロリー減る。この影響で、わずかな量だが、イモづる式に塩分や糖分などの量も減っていくのだ。
この波及効果が、1日に水をコップ1~3杯多く飲むだけで、次のような驚くべき結果を招くことがわかった。
(1)食事量が減り、総エネルギー摂取量が68~205キロカロリー低下(注:おにぎり1個が168キロカロリー)。
(2)塩分摂取量が78~235ミリグラム低下。
(3)糖分摂取量が5~18グラム低下。
(4)総コレステロール値が7~21ミリグラム低下。
これは、水を多く飲むと、食事量と糖分の多い飲料を飲む量が減ることが大きい。今回の結果について、アン教授は「これからは、ダイエットでコレステロール値を減らしたい人に医師が処方するのは『水道水』になるかもしれません。カロリーのある飲料の代わりに水道水を飲むだけで健康になれるのです。『水を飲もう!』という、単純ですが効果の大きいキャンペーンをすぐに始めるべきです」と意気軒高だ。